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鍵を開けた。
玄関じゃない。
もっと別の何か。もっと他の何か。
微妙に、微小の、微意が、作用する、何かを俺は開けた。
だっていうのに。
この状況は針1本分だって変わらないんだ…
□□□□
見慣れた天井だ。そこまで高くない普通の天井。少し視線をそらせば本棚が目に入る。その隣にチェスト。俺がいるベッド脇には店名のロゴが入った袋が4つ。
あぁ、俺の、部屋、だ
でも、なんで?
うまく働かない頭は厚手のカーテンがしまっていることを認知しない。遅れて、時計を見る。6時を過ぎていた。最後にみた時計は、カーナビの1時半過ぎを示すもの。
「あ」
アラタ。約束してたっけ。今日飯食いに行くって。あれ、でも誰かと食いに……
「あ」
マコト。たまたま会って昼飯食いに行ったっけ。そうだ、それで服もちょっと金出してもらって。だからこんなに袋があんだ。
…そこまで考えて、俺は気づいた
今まで寝てた…?誰がここに送った?まさかマコト?でもなんで住所を知ってる?
その答えはチェストの上に置かれたメモで解決した。どうやら俺は寝ぼけてここの住所を言ったらしい。それを元にマコトはここへ俺を送ってくれたらしいのだ。
……どんだけ寝ぼけてんだか。
まさか住所を言うとは。
鍵は俺の鞄から出したんだろう。それもメモの隣に置かれていた。
やってしまった、と思いつつリビングに行く。すると何やらトマトの匂いがして、キッチンの中には人影があった。後ろを向いていたがすぐに誰かわかって
「アラタ……」
呟けば、とても小さい声だったのにぴくりと反応してこちらを見る。
「てめぇ呑気に爆睡してやがって。メール送ったのに反応ねぇからまさか、と思ってきて見りゃこれだ。ったく、ちったあ今日の夕飯を楽しみに仕事頑張ったおっさんのことも鑑みてほしいね」
「ごめん……」
「謝んならすんな、ほれ、腹減ったろ。飯にすっぞ」
食器棚から白いプレートを出して、アラタはそう言う。作っていたのはアラビアータで、さすが、と思う。
…俺がサイゼリヤで食べんの、毎回アラビアータだもんなぁ
今日は飯がすごい日だ、と内心喜んでいるとそれを消すように耳元にアラタの口が寄せられた。
「約束破った罰だ。ヤるぞ、飯食い終わって風呂入ったら」
―――あぁ、もちろん
「風呂も一緒に入るからな」
…顔を見ればいつもの意地の悪い笑顔がそこにあった。
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