アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
3-5
-
□□□□
「あ」
「あら椎名さん。おはようございます」
「奇遇だね。君がここにいるなんて珍しい」
「そうでもないです。貴方が出社してこないだけで」
「うーん、俺が出社しても意味ない気が…」
「ご冗談を。貴方がデスクで本を読んでるだけで社中の女どもが仕事を熱心にやりますよ、ええ、普段の10倍以上は」
女どもって…10倍以上って…
俺は会社のエントランスホールでばったりと同僚にあった。
それはないでしょ、と苦笑しながらそう呟く。名波女史(ななみ)はメガネの奥の眼光をさらに鋭くさせた。さながら秘書官だ。髪型もお団子でそれっぽいし。
「いいですか?椎名さんはそこらの男より見目麗しくていらっしゃいます。自覚は充分おありかと」
(でたよ名波ちゃんの超敬語)
「それをうちの女どもが放っておくとでもお思いですか?残念ながらそれは無理ですね、ありえません。特にそのお笑いになった顔、甘いにもほどがあると思いますが」
…それ、シンにも言われた気がするんだけど。すんごい眠たそうな声で、まぁどっちかって言うと甘えた声だったけど、『マコトって…砂糖菓子だよな…』って。
言うほど甘いと思わないんだけどなぁ…
まぁ周りの人間ほとんど皆そう言うからそうなんだろう。俺は適当にそうかもねと頷く。ていうかそんな話をしに社に来たわけじゃなくて
「室井さん、いる?」
この人に用があってわざわざ出社して来たんだ。在宅で済むところをわざわざ。多分それができたのは明日の約束があって気分がいいからだと推測している。だってまたシンを抱けるんだよ?しかも何してもいいって言われたし。
はっきり言って、こんなに楽しみなことは久方ぶりだね、随分と。
「室井さんならデスクで踏ん反り返ってましたが。あぁ、何かイベントがあると言ってましたね」
「そう、その話を断りに来てね。電話じゃ埒があかないからさ」
「本当珍しいですね。埒があかない場合はドタキャンがデフォルトの貴方がわざわざ来るなんて」
「本当にね。でもまぁ、最近イイコトずくしでさ」
「良い事?言われてみればいつもより目尻が下がっているようないないような、雰囲気が浮かれているようないないような」
わかる?と下がっているという目尻をさらに下げる。ついでに口角は上げてこの上ないくらいの笑顔を作る。
「そうイイコト。面白い子に会ったんだ。明日も会う約束をしていてね。あ、そうだ、何かプレゼントをしたいんだけど何かいい案はあるかい?」
花はめんどいと言われそうだし、アクセサリーはまだ早いだろう。服はこの間買った。香水?好みがわからないと無用の長物に成り下がる。
名波女史は贈り物をする際必ず頼った方がいいと言われるほど選品がうまい。
…ここで会ったのはちょっとラッキーだな。
「まだ数回しか会ったことのない方ですか?」
「うん、そう」
「なら本などはいかがです?貴方が気にいる相手ですからどうせ本好きなのでしょう?」
「んー、どうだろう…でも嫌いじゃないとは思うよ。貴式と知り合いみたいだしね」
「M大の?ならお好きでしょうね。ちょうど献本用のが何冊か残っていたと思います、あとで届けさせましょうか?」
「あぁ、頼んでいいかい?すまないね、ありがとう名波ちゃん」
本、か。名案だな。シンはあの見た目だけどきっと本を読むだろう。家に行った時大きな本棚があったしラインナップもそこそこすごかった。
…びっくりしたのは雨宮蒼生の本があったことだよね
ま、それは置いといてもう一度名波女史にお礼を言う。
「ちゃん付けはやめてください」
「いいだろ、働く・努力する・頑張る女の子はみんな可愛いよ。3つ全部当てはまる名波ちゃんはもっと可愛い」
言えば「だから、それが甘いんです」と睨まれる。若干引かれた気もするけど気のせいだ。
拍車がかかってるって言われたのも、だ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
27 / 85