アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
5-3
-
『ま、そういうことだ。ていうか、もう一回聞くけど本当にお前のところにシンっていう子はいないのか?』
「いないって言ってんだろうが。大概お前もしつけぇな」
本当はいるけど。今頃第二講堂で講義受けてんじゃね。だけどそんなことは教えてやらん。絶対ヤダ、なんでかわかんないけどすっごいやだ。
…今更独占欲、ってわけでもねぇ、し…
まぁ、そんなことは置いといて、なんでそんなに”シン”に会いたがっているのか尋ねる。ある意味、わかっちゃいるけど。
『この間、もう1週間…2週間になっちゃうのかな。会う約束をしていてね、こっちから誘ったのに行けなくなってしまったから…しかも連絡する手立てもなかったんだよ。お詫びをしたいんだ』
「お前、そりゃあ、ヤバイだろ…会う約束って、夜か?」
『そう。出先でたまたま会ってさ、思わず取り付けちゃったんだよね?もう一回君と夜に会いたいって。だけどさっき言ったみたいに家にカンヅメでね…本当に外に出られる状況じゃなかったんだ』
「……………切ったな…」
『…やっぱり新にはわかっちゃうか。さすが幼馴染。今の会話で気づくとはね。そうなんだよ、ちょっと、また癖がね』
「ったく、マジで俺の周りには碌な人間がいやしねぇ」
ワーキングチェアの背もたれに体重をかける。ぎし、と音を立てて、折れるかなーと思いつつ、さらに体重をかけた。とりあえず、慎の癖がまた出始めたことのは、幼馴染としてスルーしにくい。
俺の言葉に笑う慎は、きっと何にも考えちゃいないのだろう。
そして忘れているのだろう。それとも思い出さないようにしているだけなのか。
どちらにせよ、それを解決するのは俺たち幼馴染じゃなく、カウンセラーでもなく、結局自分だ。
俺はそう考え、不安の色を悟られないようにインタビューの日程を確認する。
『今週の土曜だな?』
「そう、今週の土曜。朝9時にお前んとこのビルの一階集合。付き添い1人連れてくけどいいだろ」
『いいよ、全然。何、大学の人?助手なんてお前いたっけ』
「いや、生徒。1人めちゃくちゃお前のファンがいてな。デビュー作から初版で持ってんぞ。折角だから会わせてやりてぇなって」
『うわぁ、それはすごいね。じゃあ新作あげようかなぁ。その場でサイン書いた方が喜ぶと思う?』
「あー、だろうな。いいのか」
『もちろん。お前が連れてくる子じゃ礼儀正しそうだし、きっといい子だろうし』
「当たり前じゃねぇかよ。結構可愛い奴だけど食うなよ」
『ははっ、食べないよ。ちょっと今はシンだけでいいかな。ヤバイねぇ、俺も自分でびっくりするくらい入れ込んでるよ』
聞けばその約束をした時、服を買って昼飯まで奢ってやったという。それは慎にしてはかなり珍しく、今まで付き合ってた子には必要最低限以上の金はかけてこなかったのだ、こいつは。
誕生日プレゼントはくっそ安いアロマとか。飯はちょっといいとこのレストラン。自分から遊びには誘わないし、セックスだってそうだった。
…マジで、ヤバイんじゃん?この状況
知ってるのは俺だけ。全部知ってるのは俺だけ。
しかも内容はどす黒い、昼ドラ顔負けの内容だ。これ以上ないくらい面倒で複雑で、しかし複雑すぎるが故に単純なこの状況。
どうやら達観はできなさそうだ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
46 / 85