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「まぁお前は茶化すと怒るけどよ、誰であれどんな奴であれ、お前を思ってくれてる奴がいんのはいいことじゃん?」
その長門の言葉に俺は思わず手に取っていた白菜を落としかけた。ついでに言えば開いた口が塞がらない。
「……お前、そんなことを言えるようになって…」
「は?俺だってちゃんと考えて生きてんだよ!」
失礼な奴だなと白菜をかごに入れる。いや、失礼も何も、お前の頭の中にそんな言葉を作り出せる能力があったなんて初知りもいいとこだ。
頭ん中で散々貶してから、俺はまぁ、な、と歯切れ悪く答える。
「あいつが…俺を離してくれないし」
だけどそれがお互いにちょうどいい関係だ。なら、問題はあるまい。俺はかごに椎茸と人参をつっこんでとっとと精肉コーナーに行った。
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会計を終えてちょうど店を出る時、スマホに電話がかかってきた。相手は万智。なんだろうと思って出ると
『昨日店にノート忘れてっただろ。バーにいるから取り来いよ』
「え、嘘、マジで?わかった、今から行く」
『今どこにいんの?』
「スーパー。でもバスに乗ればちょっとだぜ。この時間そっちの方向にいい時間帯のがあったはずだし」
『了解、待ってる』
どうした、と聞いてくる長門に電話の内容を言うと「じゃあ俺もついてく!」と言った。
まぁ別にいいけど…
俺的にはあまり連れていきたくない。だってそこは俺の仕事場所、つまりは俺のウリ場所だ。そこに親友を連れていくのは少し…というよりもかなり気が滅入る。
でも長門はきっとそんなこと気にしてないんだろう。バス停の方に向かう長門は、微塵も偏見とかを持っていなかった。
じゃなかったら俺の友達なんてやってられないだろうけど、時折それに対して申し訳なくなる。
ごめん、とさえ。
長門はそれに何も言わない。
何も言わない、だからこそ俺は救われている。
「あ、やっば」
「どうした?」
「水菜買ってくんの忘れた。どーする、辰綺」
「……まぁ、春菊あるし……」
「ならいっか!」
こういう会話も、悪くは無い。
こういう日常が、いい。
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