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きよれと
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「キヨくんからさぁ、声かけてくれたんだよね。最初。」
吐く息が白い。見えている世界も白い。寒すぎて歯がかちかち言いそうでマフラーの中にすぐひっこめる。
「あぁ?なにそれ。」
対する声はでかい。
「覚えてねえーわ。もうそんな昔のこと。」
キヨの肩の位置が俺の頭の位置。
キヨの腰のベルトの位置が、俺のウエスト。
金髪で細身長身で、こんなのぜってー実況の世界の住人じゃない。
なんか間違えたんだよねー。って来年くらいには別の世界で笑っている。
知ってる?実況者ってさぁ、って笑ってる。
そうしたら俺はもう北海道のこんな地元民ばかりの繁華街を歩くことはもうない。
「お。ついたついた。ここ。」
俺を振り向かずに店の戸を開けて奥へ入っていく。奥から、おーキヨおせぇぞなどの声がくぐもってここまで漏れ聞こえる。
ガタン!と上着を脱いだキヨが店前まで出てくる。
「なーにしてぇんの早く。」
俺のダウンの、手をひっこめていたからそこはなにもないのにぎゅっともって、「ほら行くよ。」
とぐいぐい俺を連れていく。俺、きよみたいなやつ大嫌いなのに、なんでこう、あの目でのぞき込まれて「いかないの?」など聞かれたら「レトさんも行こぜー!」と背中をポンと押されると、足が前に出てしまう。俺は自室とパソコンからつなぐ世界がすべて。それでイナフ。ある日北海道くんだりから一通のメールが来て、クリックすると件名は「うぃーす。」だった。だからそのメールは読まずに捨てた。もぐもぐ。二日後にまたメールが来た。件名は「読めよぉ!」だった。しかたがないから「もぐもぐ」とだけ返した。2秒で「食うな!!」と返ってきた。
「どちらさまか存じ上げないのですが、なにか御用ですか」
「あそぼーぜ!あ。俺、キヨ。レトさんのことは知ってる」
俺は初めて見た。最大の京都盛りにひるまないどこか気づきもしないやつを。
「・・・・遊ぶってなにをどうやって?」
もうこいつに京都人の・・・の効果がないことなんてわかっているが、やらずにはいれなかった。
やつはいったのだ。いーこと考えた。のあとにするような言い方でこう放つ。
「北海道おいでよ。家止めれるし、迎えに行くからさ。」
俺の周りは空気読みに長けたやつばつかだった。この1ミクロンの空気も読めないやつの顔が見たくなった。キヨ。毎日毎日動画あげてるなーと思ったらだんだん視聴者数が増えてきている奴。
つわはすさんの動画はずっと見てた。好きだから。丁寧なプレイや低く落ち着いた声。反対のベクトルでキヨの動画は見てない。
「北海道なんて行く予定ないから。」
俺は至極冷淡に断ったが
「いうと思った。」で一度大笑いし、「じゃー俺が東京行くわー」と「いつならいい?」という電話が切れて5分。まだ本当のことだったか自信が持てず、手にした携帯を眺めていた。
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