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ひとりごと3
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…その時視界の端、レトルトの体が傾いた。
「ちょ…!」
突然の事に硬直したものの慌てて支えようと手を出す。が少し遅かった。レトルトの体はそのまま滑るように
キヨの膝元に転がった。
予想以上に眠りが深いのかもしれない。レトルトの寝息は依然穏やかな一定のリズムを刻んでいる。
警戒心の欠片も無い無邪気な寝顔に心音が速まるのを感じる。
…優しくて透明で。
けれど甘くは無くて、暖かい様な、ふと泣きたくなる様な感情。
名前なんて付けたくはなかった。徐々に顕になっていくその欲なんて知らないままでいたかったのに。
気がつくと俺は、手を伸ばしていた。
──…何時のまにか、こんな近くに居れるようになった。
当初のたどたどしい会話や痛い沈黙が、何時のまにか傍に居るのが当たり前なくらい心地よいものになっていた。
それなのに、まだ、俺は、
「…レトさん。」
柔らかな頰にそっと触れた。眠っているせいかその頰は子どもの様に熱かった。
「……んん、…、」
擽ったかったのかむずがる様にこちらに擦り寄る。
──もっと触れたくて、唯一でありたくて。
俺よりも年上である筈なのに自身よりずっと幼い顔つき。その寝顔。
寝息混じりの甘やかな声。
意外にも長い睫毛が吐息で微かに震えている。
「可愛いよな…」
小さく呟いたのは本音。大の男にこんな感想を抱くなんてほんと終わってる。
でも事実だ。信じられなくても、あり得なくても、受け入れるしかない。気づいてしまった以上無かった事に等出来る筈がない。
俺は囚われていたんだろう。自分でも気づかない程ずっと前から。
…ずっと…そう、きっと初めて会った時から。
「…好きだ、好きだよ、レトさん」
それはもうどうしようもない程に。
思わず溢れ出したその感情の一欠片。それを留める術を見出せないまま、俺はそっと唇を寄せた。
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