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─見返り─
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「ゲホゲホッ……!」
「ああ、またやってしまったじゃないか。悠真が悪いんだよ。私をそうやって直ぐに怒らすから――」
「ッ……! 触るな…――!」
噎せながらあいつの手を叩いて睨みつけた。奴は俺の首を絞めたくせに平然としていた。そして、仮面の下でまた笑ったような気がした。
「悠真はそうでなくちゃね。キミが甘えた猫みたいに私に懐くとは思っていないし、せいぜい頑張って抵抗するなりしたまえ。私はその度に楽しませてもらうよ」
そう言ってあいつは背中を向けるとお皿が乗っているワゴンカーを動かして、ベッドの脇に置いた。
「さてと、温かいスープをお食べ。私が一生懸命作った料理だ。もちろん食べてくれるよね?」
「このイカれたサイコ野郎がっ……! 人の首を絞めたくせに何が……!」
「悠真、黙って静かに食べるんだ。でないとホラ、このナイフで喉元を掻き切るよ?」
「ッ……!?」
あいつは不意に俺の喉元にナイフを押し付けてきた。ヒヤリと冷たいナイフの先が首元に触れた。
「っ、ちくしょう……!」
首元にナイフを押しつけられると、そこで睨みながら話すのをやめた。
「よし、良い子だ。じゃあ、大人しく食べるんだ」
俺の目の前に小さなテーブルを置くと、食器を並べて朝食の用意を済ませた。そして、傍から離れるとワゴンカーを押したままドアの方へと移動した。
「じゃあね、また後でくるよ悠真――」
「おい、待てよ! いい加減ここが何処だか教えろ! 今日で何月何日だ…――!?」
ストレートに質問をぶつけた。するとあいつは、ドア越しで応えた。
「そんな日付けがどうとかなんて必要なのかい? キミはずっと私と死ぬまで一緒だ。永遠が有る限り私からは逃げられない。だからキミには、時間なんてものは必要ないんだよ。わかったかい?」
「ッ……!?」
あいつは見事にイカれた答えを返してきた。俺は頭に血が昇ると、感情的になってスープが入ったお皿を扉にめがけて投げつけた。奴は扉を閉めるとクスクスと笑いながら部屋から出て行った。
「ああ、駄目だ……! くそっ、目眩がする…――!」
まるでイカれた悪夢だった。あいつと長く居れば居るほど、俺の頭は益々おかしくなる。
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