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白の記憶
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あの子が目を覚ましてから、私はまともに見舞いにすら行けなかった。何故か心のどこかで『それ』を忘れようとしていた。
現実には絶対起きないようなことが、あの子の身に起きてしまい。その残酷な現実に心を強く打ちのめされて、私にはその間の記憶がない。
まるで肉体から魂を切り離したように、心は何処かに彷徨っていた。そして、ふと気がつけば駅のホームの手前で駅員に右腕を掴まれた。どうやら私は気づかない間に電車に飛び込もうとしていたらしい。その瞬間、ゾッと寒気を感じた。人は精神的にまいると、自分でもわからなくなるらしい。駅員に掴まれた腕を振り払うと急いで走り去った――。
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