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─輪─
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真樹は隣で笑うと肩を組んできた。そして、俺の耳元で静かに囁いた。
「なあ、メビウスの輪って知ってるか? あれには裏も表もないんだよ。どんなにネジって戻しても元に戻る。それがメビウスの輪だ。ひとつに繋がった輪からは抜け出せない。お前も俺と同じ『輪』の中にいるってことを忘れるなよ――?」
あいつの囁いた意味深の言葉にゴクッと息を呑んだ。そして、体から血の気が引くと視界が一瞬ぐらついた。俺はいつの間にか、あいつと同じ輪にいた。その言葉が何よりの証拠だった。
人と人の繋がりは、やがてひとつの輪になって行く。それは小さい輪から大きな輪もある。一度、その輪の中に入ってしまえば脱け出せない。
例えば自分が知らない間に、その輪の中に入れられている事もある。気づいた時にはもう遅い。自分にとってのきっかけが一体何なのか、どうしてこんな事になってしまったのか、俺はまさにこの瞬間だった。
だれかが仕組んだ『罠』に知らぬ間にハマっていく。その時、人は絶望を知るとは知らずに――。
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