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―見返り―
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――夢の中で見たのは幻か、ぼやけた景色に一際、白の色が目立つ。立ち込める霧の中で俺は何故か玄関のドアの前に立っていた。そして閉ざされていた重い扉を開け放って中に入っ行った。
「ただいま! 父さん、母さん! 」
大声で両親に声をかけると、そのまま慌ただしく中に入った。そして、履いてる靴も持っていた鞄も床に全部放り投げて、まるで幼い子供みたいに二人の姿を必死で探し回った。キッチンに入ったが、母の姿がなかった。ただ作りかけの料理が置かれていた。そして、リビングに父の姿もなかった。いつも父が座っているテーブルの前には、淹れたてのコーヒーカップだけが白い湯気を立てて置かれていた。
いつもと変わらない風景、なのに何かがおかしいと感じた。小さな違和感はやがて大きな不安感に変わると、俺はいても立っても居られずに。大きな声を出して父と母の名前を呼んだ。
「父さん母さん、何処にいるんだよ!? 俺だよ、悠真だよ! 今帰ったよ!」
そう言って大声で両親に話しかけた。押し潰されそうな不安感を胸に抱いて、心から大声で語りかけた。なのに二人からの返事はなかった。そのポツリとした孤独と虚無感が不意に胸の中に押し寄せてくると、俺は自分の頭を両手で抱えて床にしゃがみ込んだ。
「一体どうなってるんだよ……!? 父さん母さん何でいないんだよ! 返事をしてよ、俺は此処にいるんだ! 俺は此処に……!」
悲しみと悲痛な思いに自分の胸が張り裂けそうだった。やっとの思いで家に帰れたのに誰もいなかった。そんな時、飼っていた犬のリンの事を不意に思い出した。
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