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─見返り─
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相変わらずドアの前に行くと左足が鎖で引っ張られる。だからベッドを少しづつ動かして距離を縮めた。
あいつは俺がベッドを少し動かしてることに気づいていない様子だった。ドアの前に立つと試しにドアノブを回してみた。だが、相変わらず鍵が外側からかけられていた。そこで深いため息が自然に漏れた。
「っ、のやろぉ……!」
ドアが開かないなら次は手で叩いてみた。力いっぱい叩いてみたが びくともしなかった。それどころか両手が痛くなってきた。そして、最終手段でドアに思いっきり体当たりした。だが、いくら体当たりしてもドアが壊れる事はなかった。
「ハァハァ……! くそっ、ちくしょう……! 一体、どうなってやがる…――!?」
叩いて体当たりしても、ドアは全然びくともしない。まるで固い鉄の扉だ。このドアさえ壊せば俺は此処から逃げれるのに。そう思うと何故か、もどかしい気持ちになる。
――『ナギ』とか言うイカれた奴に拉致られて、此処に監禁されてから俺の人生は全部メチャクチャだ。はやく脱出しないとと自分自身に何回も言い聞かせた。だが、なかなか上手くいかない。
それに今が何日過ぎてるかもわからない状態だ。部屋にはカレンダーも無ければ時計もないし何もない。この空間にいつまでもいると頭がおかしくなるのも事実だ。俺はこの空間に一人 閉じ込められたままだ。いつか本気でおかしくなる。今はその途中なのかも知れない。
「ああ、くそっ……! ちくしょう、とにかく考えろ。どうしたらいいのか考えろ…――!」
自分の頭を両手で抱え込むと、そこで冷静になろうと必死で努力した。そして、気持ちを落ち着かせると頭が少し冴えてきた気がした。
そもそもこの部屋にはドアが1つしかない。ついでに窓は鉄格子と分厚い板で塞がれていて、外そうとしても無理だった。かといってシャワールームはコンクリートの壁に覆われていて、穴なんてものは何1つもない状態だった。
それに天井も同じく塞がれていて、天井裏なんてものも見あたらない。まさに完全な密室状態だった。だから俺は冴えた頭で色々考えた。自分の爪を噛んで、ありとあらゆる角度で物事を冷静に考えた。きっとどこかに『盲点』がある。そう、俺はそこにかけることにした。
「ちくしょうっ! こんな所でくたばって溜まるか! 俺は絶対、家に帰ってやる…――!」
その言葉を口にすると僅かに勇気が湧いた。
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