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深く……ひたすら深く
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例の親権争いは親類縁者も巻き込んで
揉めに揉めていたようだったけど
最終的に母に引き取られることで
決着した。
正式に引き取られると決まった日、
母は再び家へと招き入れてくれた。
そんな時ですら母は俺を
見ようともしなかった。
ただ一言、
「朝輝に感謝しなさい」
その言葉の意味を知ったのは
随分先の話になるけど……
子供だったから仕方なかったとはいえ
俺は自分の事しか考えてなかった。
今だからこそ色々見えてくる
母の心情。
この人も被害者で父の暴力に怯え、
幼い子供を抱えた、か弱い女性で
自分の人生に不安を持ちながら
生きていたのだと。
そんな自分が何故、余裕もないのに
俺という他人まで引き取らなくては
いけないのかという苛立ちとか
この頃の俺は何一つ分かっていなかった。
ふふ、と、知らず声が漏れた。
この後に及んで……か。
また、
こうやって俺は平気で嘘を付く。
――本当は
全部気が付いていたんじゃなかったか?
子供であることを最大の武器として
俺はあの頃、生きていたはずだ。
そして、今なお認められないでいると
……何故、言えない?
深く……とても深く闇に溶けそうなくらい深く、
意識を澱ませながら生きているのが
精一杯だったと告白すれば救われたのか……な。
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