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『兄』
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「そう、アレでね…」
「ヒッ!」
「聞いてたんだよ、サクとのやり取り。たまに電話もしてただろ?」
抱き寄せられ、髪に指を差し入れてくる遥に細い悲鳴を上げる。全力で抵抗するけど、俺より十数センチ高い身長の体はガンとして離れない。何が面白いのか、遥は腕の中でジタバタする俺にクスクス笑う。
「叶多ってば声、緊張して上擦ってたよ。可愛いったら………だから、すぐに分かったよ。サクが好きなんだって」
「その時はまだ無自覚だったみたいだけどね」と遥の声が突然低くなり、抱きしめる力を強くされる。俺は潰れて呻いた。
「ソッコーでモモに頼んだ。サクの好みは知ってたからさぁ…バッチリだったっしょ?でもあの女、ああ見えて本性めちゃくちゃビッチだからね?ビックリだよねー」
遥の信じられない言葉の数々に、俺の目に涙が浮かぶ。
サクの笑顔が―――浮かぶ。
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