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シオンのエスコート③
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うわっ!ビールかけられるのは勘弁っ。
そう思って目を瞑ったけど一向に濡れる気配がない。
そぉっと目を開けると、そこには、ビールを持ったおっさんの手をぎりぎりと掴むハミドがいた。
美容院で整えたのだろう、一分の隙もない整った眉間に電光を走らせ、緑の瞳は今にも獲物に噛みつくような攻撃的な光を獲物に向けているようだった。
激おこって、やつだ…。
おっさん、震えてるし、ちょっとちびってないか…?
一拍遅れて側近の人達がハミドを宥め、おっさんを引き剥がす。「お怪我は無いですか?」と、側近の人がおっさんに駆け寄り、周りを落ち着かせようとしているが、ハミドの方はもうカンカンに怒っているようで、俺の腕を無言で強く引いて会場を飛び出した。
怖ぇえええーー!と、引きずられるようにしてついてくと、雅さんが慌てて追いかけてくる。側近の方が雅さんを抑えようとしてるので、「ハミド、雅さんに乱暴させないで!」と、声を掛けると、振り向いて顎をくぃっと出す。側近の方は雅さんを離してくれて、この引きずられてる俺に付いてくる雅さんに「ごめんね、この人達は全然悪い人達じゃないんだ。これでも、さっきの助けてくれたんだよ。」と、安心させようと声を掛けると、ピタっとハミドが歩みを止めた。
俺をいきなりガバっと引き寄せると、「シオンは、俺のだ。軽々しくベタベタと触るな、女。」と、威嚇で爛々とした緑の瞳を雅さんに向けた。
その時、横の扉がギィーと開きその人が出てくると、バタンと閉まった。
のんびりした声で
「大きな声で、それはやめてくれませんか〜?」
カリフさんだった。
俺に救世主が来たって思った。
カリフさんは、ハミドと俺をしげしげと見つめると、大袈裟に溜息をつく。
ハミドはその様子をじぃ…っと見ると、俺から静かに離れた。
剣呑な光を湛えたままだが、幾らか冷静になったらしい。
「あとが色々大変になります、ハミド。会場の一番上の階に部屋を取ってありますので、そちらでお話でもしましょう。雅さんはお姉さんの紫さんから伺ってます。アシュリー女史のレッスンの時に何度かお会いしましたね。シオンにお願いしたい事が何かお有りとか。そのお話も出来ますし、ここは何かと目がありますから、心配でしたら女性も連れておりますし、いかがですか?ご一緒に。」
紳士的な笑顔で、雅さんを安心させると、雅さんも部屋に一緒に行くという。
チッ!と、舌打ちしてハミドはまた不機嫌そうに歩き出した。
ホテルの部屋に入ると、ハミドはユニットバスでゴシゴシ手を洗っているようだった。
「はぁ、シオンに害を加えられ無いよう、あのおっさんに触ったらしいので。昔なら放置してたでしょうに、ハミドにとっては余程我慢ならなかったんでしょうねぇ。あっ、これはロクシタリアンのハンドクリーム。限定シトラスだよ。シオンが塗ってあげたら機嫌も治るかもよ?」「流石に人前でそれは…」
雅さん、いるし。
カリフさんは雅さんを一瞥してから「私は一応、知ってもらってたほうがいいと思ったんだけどね。アシュリー女史のレッスンの時に、皆にシオンの恋人は男性なのは言ってあったから、生徒さん達は皆、シオンに対して変な誘いをして来なかっただろう?」
それは、知らなかった。でも、皆フレンドリーで優しかった。
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