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ハミドの地下迷宮④
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《ここにいても仕方がないようだな。》
救助は諦めて、自力で脱出を図ることにする。
《どうされるのですか?》
ドハは不安げだ。
《ここ、不自然だと思わないか。この、壁とこの壁の段差がある。》
そう、違和感があった。ただ、大きな土の穴に落ちただけ、それにしては随分と下まで続いていたし、高さの割にはほぼ無傷だ。下にクッションのように柔らかいだけでなく、恐らくだがここに落ちる前に何回か衝撃をやわらげるようなものが設置されていたに違いない。
ジェットスターみたいにあっという間に落ちてきたという思いはあるが、人為的に作られた穴のように思えて仕方なくなってきた。
《壁?俺にはただの土にしか見えません》
違和感の正体はきっと、ここだけ平らな土壁を掘ることで分かる。もぐらのように手で掘るように柔らかい壁を掘って削っていく。
すると、やはり、何かのスイッチのようなものがある。
スイッチといってもボタンを押せばいいと言うものではなく、
パズルのように、古代文字を完成させなければならないようだ。ドハから声が掛かる。《ハミド、もしかしてこれは鳥の象形文字では?》
鳥の象形文字を横にすると、鳥が飛び立って行くように見える。
成る程。
《ドハ、上を持て。俺が下から上の溝に入れてみる。》
ドハに上を押さえさせると、案外簡単に嵌まった。
カチッという小気味良い音がした瞬間、目の前の壁が崩れ、石の扉がゴゴゴゴゴゴと、凄い音を立てて開いた。
土煙にむせながら、この先はまたどんなわながあるか分かったものではないと、ペイント弾を改造して、実弾を実装する。
ドハは驚いた顔をしていて《えっ、この銃は改造出来るんですか?》と聞く。
《この装備は元々、殺傷能力のある銃を改造してペイント弾を詰めてるような仕様になっている。少し部品の取り替えはあるが、見てろ。山岳部隊ではやらなかったか…?》
座学は殆ど、寝て過ごしたらしいドハは耳が痛いです…と、しょんぼりしていた。
《シオンを守れるのは、お前しかいない。俺の分身に語ってきかせたようなものだ。気にするな。》
俺もここまでドハに窮地を何度も拾われている。二人の欠点を補いながら、お互いに成長していけばいい。
石の扉を抜けて行くと、太古の昔からある静穏な空気が流れていた。何処からか風が通っているのか、吹き抜ける音がする。天井部分の空洞が高いため、二人の靴音がカツーンカツーンと響く。
少し肌寒いが、外よりは暖かい。
《ここは、どこかの遺跡に雰囲気が似ています。》
《そうだな。確かこの付近には行方不明になった五人の男がいて、そのうちの一人が発見させたが、黄金のとうもろこしがあると言って、息絶えた。そんな伝説がある。》ミステリーの、類いはなかなか好きな俺だが、ドハの心には全く刺さらなかったらしい。
《いくら黄金でも、とうもろこしって…せめてまだリンゴとかがいいな。なんだか色気よりも食い気って感じで、嫌っすね。》
嫌っすね、と来たか。
だいぶ解れてきたな、ドハ。
通路を通り、大きな広間のような所に出ると礼拝堂の形をした場所に出てその奥には図書室のようなものが見える。
周りを近付かせないようにか、髪と髯を腰まで伸ばした賢者のような厳かな表情の石像が、周りを囲んでいかにも踏み入れたものに天罰加えますという空気を纏い、永久の時を厳重に監視し続けている。
《何だ…ここは…。》
《すげぇ、遺跡ですが、手付かずな感じですね。世紀の大発見ですか!?》とドハも興奮している。
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