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ミハイルの憂鬱①
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side ハミド
ミハイルと父上。
幼い頃から2人は、主従関係を結ぶと常に片時も離れず一緒にいたと聞いている。
その2人の仲は一時期怪しまれる程だったそうだが父上はともかくミハイルの実直で堅すぎる性格を知るものとしてはあり得ないと思っていた。
そもそもそんな事を言い出したら不敬罪になるわけだが、2人を知る皆が思うのは『ミハイル公にとって、陛下は男としても、あり得ない。』という見方が殆どなので、どちらにしろ父上が侮られている事に変わりはない。
まず、父上は猫のように気まぐれだ。
俺と違い一国の王たる父上は公務で外出する際のスケジュールは分刻みで管理されている。
父上が通る予定の道路等は国内のみならず海外でも封鎖され、大規模な人と労力が動員されている。
そう、動員されているのは父上も知っているはずなのに…
10年近く前になるが、父上とある国で寄り道をした時にこんな事があった。
突然観覧車に乗ろうと言い出し、その頃は世界一大きな観覧車とかいう触れ込みで所要時間が30分はゆうに掛かる乗り物で、景色はとても素晴らしいものだった。
二人で楽しかったねとゴンドラから降りてると、泡を食っていたミハイルが地上で慌てていた。
『陛下、どこへ行っていた。』
『折角ならとハミドに観覧車という物を見せてやりたくてな。ミハイル、俺を叱るか。』
『…。陛下は、父親としてハミド殿下にそれを必要と感じたのだろう、側近として配慮が足りなかった。』
渋面を、作りながらも父上個人の我儘でない時はこうして叱らないのがミハイルの優しい所だったと今になれば思う。
分刻みで父上が通る予定で封鎖された道路は結局予定より45分も遅れて出立した後に解除されたのだから、その国の渋滞が起きた責任やらはミハイルが全ての尻拭いをする事になる。
部下も大切にするミハイルは全ての責を自ら負うことも多々あったが、父上が常にいる事で無能でも可愛がられている側近はいい等といらぬ敵意を向けられた事もあるとか。
正直言って、父上はミハイルでからかっているだけで、俺をただのダシに使われたという表現のほうが正しい。
好きな女の子に振り向いて欲しくてイタズラする小学生かという位馬鹿馬鹿しい事だが、ミハイルの苦労を思うと彼の美しい眉間に皺の寄らない日は一向に訪れそうにない。
俺の一番の側近がカリフになったと知った時、ミハイルはよくカリフを呼びつけ、心構えを説きながら師弟のように様々な手ほどきをしたと言う。
カリフもかなり有能ではあるが、ミハイルよりもカリフの方が何かと短気で、キレると怖いし、何よりも口うるさい。
本当にミハイルからあの優雅でどっしりとした振る舞いを身に着けたのだろうかと、首を傾げたくなる事もある。
しかし不思議な事は他にもある。
情けない父上ではあるが、曲がりなりにも賢王と呼ばれる今と違い、昔はめちゃくちゃ派手に遊んでいた父上は殆どの忠臣がそっぽを向く中、献身的に面倒を見ていたと聞いた事がある。
何か彼をそこまでさせるのだろうか。
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