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ミハイルの憂鬱④
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side ハミド
父上が珍しく焦りながらミハイルに説明している。
つまり、父上はこの誘拐計画を知ってはいたが、ミハイルの今後の為に喜んで捕まったと言う事らしい。
ミハイルは、この誘拐が終わったら自殺して陛下に詫びようと決死の覚悟であったこと等を辛そうに話し、何故俺に相談しなかったと父上を蹴り上げていて父上も受け身を取りながらミハイルのするがままにさせていた。
俺はさっきから側近からのテロリストの集団を捕獲した、敗走した、との報告を随時受けながらこの大人2人をぬるい目で眺めていた。
『だいたい、暗殺計画なぞ、ガキの頃から慣れっこだろう。何を今更…俺達は何度も裏切られてきた。今回位、逆手に取ってもいいではないか。元老院のバカ息子共な、アイツらが計画したんだ。ザイールとハミドの関連の会社だとほざいていたが、あれもあるにはあるらしいが恐らくクライアントはそこではない。
むしろあらぬ疑いをかけて圧力でもかけたらそれこそ厄介だったのだぞ。
親父の代では権力のあった元老院だから、さぞやいい所領を持っているだろう。取り上げてあれで税金の足しにしようと相談したら賛成したか?お前の事だ、絶対に許さんと息子の方を裁きに行くだけで所領はそのままにするだろう。』
父上が言えばミハイルは激昂して言い返す。
『当たり前だ!上が無能なだけで、ハインシュタ家は俺の家と同じ位、格の高い我が国の古参貴族だぞ。雇われている使用人にも誇りがあろう。国の都合でその生き甲斐を奪って良いものではない。』
そのミハイルに心底呆れた顔で父上が服についた汚れを払うよう立ち上がり腕を組んで睨む。
『だからお前は頭が固いというのだ。
俺の命を狙う反逆罪と、所領を差し出すのを天秤にかけたら、所領の召し上げ程度で済んで使用人共にはむしろ感謝されるはずだ。頭を使ってたまには適当にサボるほうがストレスも溜まらないぞ、ミハイル。
それにしても折角温泉に来れたのだ。少し浸かればその眉間の皺も治るのではないか。』
『俺が仕える陛下は賢王で、そのような悪事に加担するつもりはないっ。ザイールやハミドに顔向け出来ない。もう、次に俺に相談無く陛下の身にこのような事があった場合は俺は自害してでもお諌めする。』
ミハイル公の決意もどこ吹く風でうるさいと言わんばかりの父上だが、どうやら此処が温泉地であることも承知しておられるらしい。
ミハイルは温泉には気がつかなかったようだ。
『父上、この温泉は弱酸性の硫黄だが、あまりに強すぎるので、近くの温泉地で軽めの温泉に入ってからこちらに来ることをオススメする。』
父上は愉快そうにそうかと嬉しそうに笑い、ミハイル公にこのあとは近くの温泉地に移動し一緒に風呂でも入って疲れを取ろうと声をかけるが、手酷く断られていた。
ミハイルに、大丈夫かと声を掛けると陛下に何事も無くて良かったと心底ホッとしていた。
どうもこの男も素直ではない。
父上が嫌いなわけではないのに、絶対に屈してたまるかと言わんばかりの気概だ。
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