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〜貧乏生活その③〜ハミドの初バイト③
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side ハミド
『なる程、こちらのテツゾー様がお困りだというので、あくまでもお手伝いだったわけですね。てっきりウォール街の靴磨き少年の真似事でも初めたのかと、思いましたよ。種銭を集め、株でも転がすのかと…』
世界恐慌の逸話を持ち出してまで、株などで不正に金を増やすなというカリフの牽制は、一切の楽な道を許さないという覚悟を、感じる。
俺はそんなつもりでテツゾーを手伝ったわけではないと言うのに…。
カリフは、仕事が終わっても、俺達に付いてきた。
テツゾーには、今日のバイト代だと9千円を渡すと、それを受け取らずにお前のだと言う。
「気に入らないなら代金はいい、なんてそういう気持ちで仕事はしているが、なかなか客に堂々と言える事ではない。」
俺がカリフを、チラリと見るとカリフはテツゾーに、言う。
「彼にお金を払うのであれば、適正な額をあげてください。学生ですし、彼はジョギングする程、朝は暇だっただけです。少なくとも道具をお借りした分、あなたは赤字ではありませんか。」
身も蓋も無い言い方をするなとカリフを睨みつけると、むしろテツゾーが声を荒げてカリフに怒鳴った。
「何を言う。このハミドって子は朝のジョギング中に俺を助けてくれただけでなく、店を空けて待ってるお客を困らせる事なく仕事をしてくれたんだ。しかも今日は新規のお客も沢山来てくれて客足が途絶えないのは、あんなに丁寧に仕事をしてくれたからだ。この金以上に仕事をしてくれたのに…ありがとう。」
「礼には及ばない。そして、カリフは俺の保護者みたいなものだ。そんなに叱らないでやってくれ。では、ありがたく受け取るとしよう。だが、病院にはきちんと行って診察してもらうように。本当に具合が悪そうだ。」
「これから病院で診てもらう事にするよ…もし、ハミドが学校が終わってもまだ時間があると言うなら、今日も夜5時から少しの時間ここで靴を磨いてるから、来てくれる事は出来んだろうか…今日は本当に具合が悪くて…。でも、礼はしたいんだ。」
分かったと言って、テツゾーと別れると、カリフに一旦家に帰ってから学校に行くと告げた。
『マスウードには、事情を説明して、そのお金はハミドの物としてカウントしてもらいますかね…本当にあなたは、お金に困る事が無い星の下に生まれているようです。所で指示待ちの案件がかなり溜まっておりまして、金銭は発生しませんが、その、資料だけでも目を通して頂けませんか?』
無給だというのに、ド厚かましくガッツリ仕事を入れてくるコイツをぶん殴りたい気分だったが、俺はその時、別の心配をしていた。
『なぁ。テツゾーは、夕方また仕事に復帰出来ると思うか。』
『どうでしょうねぇ…私は医者ではありませんが、あの顔色を見ると内臓に何か疾患がありそうな気がします。』
カリフも神妙な顔をしていた。
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