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知らない部分
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矢代は一目惚れだったらしい。
中2で初めて同じクラスになった時の、あの、目が合った瞬間。あの時から矢代は、俺を気にせずにはいられなくなっていたという。
初めは矢代自身も戸惑っていた。なぜ男の俺に惹かれたのか理解できず、自分が同性愛者かもしれないと認識すると、余計に困惑していたらしい。
だが、心や体は正直で、手を伸ばせば届く範囲に俺がいるのなら近づきたかった。 だが、人間のタイプもグループも異なった俺と上手く接触できず、当時の幼稚な頭では、嫌がらせで気を引くことしか思いつかなかった。 だから物を隠したり、汚したりしていた。
だが俺は相手にしなかった。ムキになった矢代は、俺に、どんな目であっても良いからこちらを向かせようと、行為をエスカレートさせた。
そんな時、矢代にとっての障害物が現れた。
それが鈴谷だった。
鈴谷は自分と違い、好意を寄せる人間の隣に楽しそうにいる。その上、矢代の行為が酷くなるにつれて、俺と鈴谷の仲が一層深まっていくように見えたらしい。
矢代はそれが気に入らなかった。
好きな人間と上手く仲良くなれない歯がゆさと、鈴谷に対する嫉妬、それから自分の性的指向に対する悩みや葛藤が、嫌がらせの矛先を鈴谷に向けさせた。
八つ当たりだった。
鈴谷は俺を嫌がらせの標的から外させるため、矢代のはけ口に進んでなった。そこで鈴谷と矢代は、「鈴谷をいじめる代わりに、俺へは何もしない」というルールを作った。
だがそこで卑怯な考えが浮かんだ。「矢代にとっては」俺に近づくための最善策だったのだ。
鈴谷の状況を利用して、俺の動きを封じ、従わせる。そして俺の行動で、鈴谷が俺を嫌うように仕向けた。鈴谷と俺をどうにかして引き離したかったのだ。
案の定、その計画自体は上手くいき、俺を自分の監視下、あるいはフィールドに置くことができた。だが、俺と鈴谷の絆は強くなるばかりだった。
しびれを切らした矢代は、とうとう許されないことをする。鈴谷とあの画像を人質に、無理に俺と鈴谷の仲を引き裂かせたのだ。
二人の信頼関係は崩壊したように見えた。だが俺が去った後、鈴谷は、それでも俺を信頼しているという意味の言葉を矢代に向けて放ったのだという。
その瞬間、矢代はこの世で最も鈴谷を嫌いになった。
そして、そのしぶとい俺への信頼もろとも、鈴谷を破壊したくなったという。
そして俺が去った後、感情任せに、軽薄に、あの画像をアップした。後に矢代はこの行為を後悔したが、皮肉にもその画像は広範囲に拡散され、もう全てを消し去ることは出来なくなっていた。
話を聞いていて思い出した。
中2のある一定期間、矢代は不登校になっていた。 被害を受けたはずの俺が毎日登校する一方で、加害者がそうなっていることを疑問に思っていたが、この時矢代は自分のしたことを悔やみ、家に引きこもっていたらしい。そして中2から先日に至るまで、このいじめの件以降、矢代は俺に接触してこなかった。
それは罪を犯した自分に対する、矢代なりの戒めだったのだ。
だがそれでも、俺への想いは忘れられず、逆に離れれば離れるほどに、好意は募るばかりだった。
人間関係がほぼ白紙に戻る高校入学。
新たに知り合った女子(それも数名)と頻繁に情事を行っていたのは、
俺への気持ちと、
自分の性から目を背けるためだったのだ。
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