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「みなさん、もう時間ですし、」
「整列して待ちましょう。」
蘭と俺がそう言うと、男どもは散り散り、自分のクラスの列に戻って行った。
「ラクショー。」
「雪ちゃん、聞こえるから。」
しっ、と人差し指を口の前に持って俺に注意する蘭は、しかし楽しそうに笑っていて。
「はーい。」
俺がわざと可愛いげに返事をすると、二人でクスクス笑った。
こういう日常が、そのまま続いて行くと思ってた。
願ってた。
ねぇ神様、俺はもう、
一度諦めた奴だよ。
手を離した愚かな奴だよ。
あれ以上のものなんて、
いま以上のものなんて、
望んでいないから。
だからもう、
放っといてくれて、
よかったんだよ?
ーーー
ーー
ー
「ではこれから、××年度、始業式を始めます。」
生徒会の副会長がそう言うと、少しざわついていた館内はピーン、と静かになった。
「では、初めに、学園の理事長の挨拶を…、」
式というのは退屈なもので、俺の意識はふよふよと飛び、思考はぶちぶちと切れる。
去年の俺は、新しい環境、新しい人間関係、新しい気持ち…
全てが新しくて、でもそれは、"新鮮"と呼べるようなキレイなものでもなくて。
それでも俺は、振り返らないと誓ったのを覚えている。
全部捨ててきたのは、過去に繋がる一筋の糸も残さないためだから、
この、全寮制の男子校という閉鎖的な世界で俺は、
新しい"俺"を作ろうと思った。
もう、傷付くことがないように。
実際、あのとき何が悪かったのかはわからない。
素直でないのは昔からだったし、
それが悪いことだなんて、言われたこともないし思ったこともない。
でも、
素直な人は魅力的だなとは思う。
もし俺がそういう人間だったら、
愛してもらえたのだろうか。
…なんて、今更"たられば"の話をしても仕方ないのだけれど。
ねぇ神様、
俺は本当の意味で、忘れることができるのでしょうか。
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