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4 (翔、過去)
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震えるその身体を、しっかりと抱きしめた。
けれども彼はまるで抜け殻みたいで、
クシャリと音をたてて、潰れてしまった。
===翔side===
必死に声を抑えて泣く幼なじみを、俺は抱きしめることしかできなくて。
「ごめん、翔兄、逃げて、ごめん、」
そればかりを繰り返す彼は、痛々しくて見ていられなかった。
この幼なじみと、俺の弟が付き合い始めたのは彼らが中1のときで。
二人の様子を見ていれば誰だって、そうなるのが自然だと思うくらいだったから、
たしか俺も、「よかったな」なんて祝福した。
「ありがと」と照れたように笑う雪の顔を、俺は今でも思い出すことができる。
それが崩れたのはいつ頃だったのだろう、
二人が学校の近くに部屋を借りた後の話だったから、
今から1年前くらいだろうか、
たまに実家に帰って来る雪は明らかに元気がなくて。
-今思い返してみれば、この1年で彼はかなり痩せた気がする。
透明な白の輝きを持っていた綺麗な肌も、今じゃ青白い。
ある日のこと、雪は泣きながら俺に相談してきた。
「どうしよう、あきらが、俺から離れていく、」
目を真っ赤にして、震えながら。
雪はひたすら泣くだけで、詳しいことを教えてはくれなかった。
だから俺は、弟を観察することにしたのだ。
そしてすぐに、雪が泣きながら言っていた言葉の意味がわかったのだった。
『浮気なんてやめろ。』
俺は繰り返し弟にそう言ったが、全く彼は耳を貸さなかった。
それどころか、まるで『何言ってんだコイツ』というような顔で、俺を見るのだ。
なぁ、彰。
お前には雪の声が聞こえない?
あんなに痩せた頬を痛々しく流れる雪の涙が、お前には見えない?
お前を愛しているという、雪の気持ちがわからない…?
「おい…、」
俺は、泣き止まない雪を抱きしめながら、
部屋の外にいるであろう秘書に声をかけた。
「わかっております、すぐに手続きを」
彼はそう言って、車に戻って行った。
…優秀な部下を持つのはいいものだ。
「雪、もう大丈夫、」
お前の居場所は、俺が作るよ。
誰も知らない世界に、
お前を放してあげるから。
「雪、お前は春から、俺の学園の生徒だよ。」
俺のかわいい幼なじみは、腕の中でコクンと頷いた。
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