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8 (彰)
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手放したものは、取り返せばいいだけ。
だけど、
消えてしまったものは?
どうやってもう一度、手に入れればいい?
"俺の"雪は、どこにいったのだろう。
消えてしまったのかな、
それとも、
消されてしまったのかな、
どちらにせよ、
ただ取り返すために手を伸ばしても駄目だと悟った。
===彰side===
バタン、と重厚なドアが閉じて、俺を襲った静寂。
振り向きざまの、雪の顔が目に焼き付いていた。
あの一瞬、彼は確かに"雪"だった。
俺を映す大好きなあの目、
その奥で、たしかに"俺"を感じたのがわかったんだ。
雪の瞳、
吸い込まれそうな黒い黒い、瞳。
中学の頃から彼は、感情が表情に出づらい奴だった。
「真中の考えてること、お前よくわかるなあ。」ってダチに言われたのを覚えてる。
「ずっと一緒にいるからな。」って答えながら優越感に浸ってた。
お前にはわかんないだろうけど、雪の目を見ればなんでもわかるよ?って。
俺の反応ひとつひとつに、彼は反応を示してくれて。
それが心地好かった。
雪に影響できている自分を感じるのが、ものすごい快感で。
一緒にいるときの、愛しい愛しい、という目は勿論、
俺が他の誰かといるときの、
憎い哀しい、という目まで。
全てが綺麗で、飽きることなんてなかった。
今考えてみれば、雪は一人でいるときに、
逃げたい、という目をしていたのだろうか。
「雪…。」
俺の呟きは、生徒会室にぽつりと消えて。
先程まで彼がいたこの空間に、一人でいるのが辛かった。
俺がいない1年間、彼が一人で過ごした空間にいるのが辛かった。
だけど、出たくもなくて。
力無くダランと伸ばした腕を見つめながら、
それでも俺は、これからのことを考えようと努めた。
「とりあえず、」
生徒会補佐というポジションを、利用する他はないと思った。
「雪は、俺の補佐。」
"園田"という肩書きに、初めて感謝した。
==彰side 終=====
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