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フ、と意識が浮上すると、そこは見慣れない場所だった。
「あ、真中さん、気付きました?」
「え、あれ…」
ここは、どこだ?
これまた聞き慣れない声に視線を向けると、そこには白衣を着た男の人が立っている。
物静かで落ち着いた印象を与えるそのひとは、
少し垂れ目がちの瞳を心配の色に染めて僕を見ていた。
「あぁ、ここは生徒会室の仮眠室ですよ。」
心の問い掛けに答えるようにその人は言って、
「気分はどうです?」と聞いてきた。
「えっ、と…さっきよりは全然…」
そうか、僕はさっき倒れたんだ…。
ずっと具合が悪かったのに、無理をしてしまったことが原因だろう。
「貧血を起こしてしまったようですね、
朝ごはんは食べました?」
「いえ、食べてない、です…」
「そうですか…、食べなきゃ駄目ですよ?
朝食は、一日の体調をととのえてくれるんですから。」
「す、すいま、せん…」
一応、食べられるときは食べているんだけどなあ。
「先生、お説教は後にしましょう?」
そこに、柔らかい声。
「あ、咲月さん。」
「雪さんが目を覚ましたらすぐに呼んでくださいって言ったじゃないですか。」
ドアから入って来たのは薫先輩で、
見知った顔に僕は少し安心した。
「雪さん、心配しましたよ?」
薫先輩は近付いて来て、親指で僕の目元を拭う。
「っ」
そこで初めて、僕の顔が涙に濡れていることを自覚した。
「大丈夫ですか?」
でも薫先輩はそれに触れることなく僕の頭をふわふわと撫でた。
それともこれは、涙への問い掛け?
「ちょっと疲れが溜まってしまったみたいで…」
「……そうですか、こんなになるまで気づかなくてすみませんね」
「いえっ、そんな…」
また、心配をかけてしまった。
「…そんな顔しないでください、
僕が心配しているのは何も、雪さんを哀しませるためじゃないんですよ?」
「すみま」
「すみませんじゃなくて?」
「……ありがとうございます。」
「どういたしまして。」
その方がうれしいです、と笑う薫先輩を見て、少し気持ちが軽くなった。
「理事長に報告してきますね、
彼、とても心配していましたから。」
「ありがとうございます、先生。」
僕たちの様子を少し離れたところで見ていた白衣のひと(察するに、保健室の先生)は、
薫先輩のお礼ににっこり笑うと仮眠室をでていった。
パタン、と扉が閉じると顕著になるは沈黙。
でも、なんだか嫌じゃない、とおもった。
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