アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
14
-
「雪さん、どうします?自室に戻ってお休みになりますか?」
「あ、はい…」
いつまでもここにいるわけにはいかないよなあ、と思って僕はベッドから出る。
「いえ、別に追い出そうっていうんじゃないんですよ?」
「ふふ、わかってますって。」
「肩貸しましょうか?」
「いえ、大丈夫です、一人で歩けます。」
寝たからか、少し体が軽くなった気がする。
「薫先輩、ずっとここにいてくださったんですか?」
「ずっと、というほどではなかったですが…、
雪さんの目が覚める直前までここにいましたよ。」
少し席を立ったすきに目を覚ますんだから。と恨めしそうな顔で僕を見る。
でもその口元は微笑んでいて。
「あはは、すみません。
じゃあ、手 握ってくれてたの薫先輩ですよね?」
ありがとうございます、と言ったらびっくりした顔をされた。
「…先輩?」
「…あ、いえ。
よくわかったなあと思いまして。」
そう言って薫先輩がふわりと笑った。
「なんだか夢の中で安心した気持ちになれました。」
「それはよかったです、
セクハラとかで訴えられたらどうしようかと。」
「あはは、セクハラって。」
僕は思わず笑ってしまって、それにつられるように薫先輩も笑った。
こういう時間が、もっと続けばいいと思った。
「部屋まで送りますよ。」
「え、そこまでしていただくわけには…、」
「いいんですよ、僕が雪さんについていきたいだけですから。」
「でも、…あ、仕事があるんじゃないですか?」
生徒会室に来たわけだし、
何かやらなければならないことがあったのではないかと思って聞いてみるも、
「暇で暇で仕方がなかっただけですよ」と一蹴。
そんなばかな…とは思ったけれど、せっかくの厚意を無下にするのも悪くて、
結局薫先輩と一緒に部屋まで向かうことにした。
生徒会室から出るときにはまだ先生は電話をかけていて、
会釈をすると垂れ目をもっと垂れ目にして微笑んでくれた。
「蘭、ちゃんと仕事してます?」
歩きながら生徒会の話になって、僕は蘭の仕事ぶりについて聞いてみた。
僕が園田彰の専属補佐であると同時に、
蘭もまた薫先輩の補佐だ。
あれから一ヶ月が経ったけれど、僕たちはあまりそのことには触れていなくて。
「えぇ、彼もとても優秀な方ですよね。」
「そうですね、僕と違って。」
「もう、雪さんはいつからそんなに素直じゃなくなっちゃったんですか?」
「最初からですー。」
そんな冗談を言い合えるようになるなんて、1年前には考えられなかったな、と思った。
だって、部屋につくのがこんなにあっという間に感じる。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
60 / 223