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「あ、雪!おかえりっ!」
「ただいま、蘭、帰ってたんだね、」
しばらくの間、部屋の前で顔のほてりを抑えていた僕がドアを開けると、
その音に反応したのだろう、蘭がぱたぱたと走ってきてお出迎えしてくれた。
「うんっ、…雪、大丈夫…?」
「え!?」
「何かあった?」
そう疑問形で聞きながら、蘭の目は『あったでしょ。』と確信しているようで。
「何か、って?」
何もないよ?とリビングに向かいながら付け加える。
「だって顔、赤いよ?」、
蘭の言葉でさっきの出来事がフラッシュバックして、とても焦った。
「本当に何もないってばっ」
また顔の熱が…!
しどろもどろしてしまった気がするけれど、あくまでも"何もなかった"ふり。
だって、なんて言えばいいの?
薫先輩が、耳にキスをしてきたー!って?
…恥ずかしすぎる…!
「…そか。」
ぽつり、蘭は呟いて、ソファに座る。
「…らん?」
「なに?」
「なに、て、どうした…?」
「どう、ってなにも?なにゆってるの、ゆき。」
「…え、っと、」
「へんなゆき。ほら、おふろでもはいっといでよ。
ぼく、もう寝るからさ。」
『なんだかつかれてるんだ、きょう。』
言い終わるか終わらないかのうちに、
蘭の姿は彼の部屋に消えていった。
僕はなんだか不自然さを感じて、でもそれはどこからくるものなのかわからなかった。
しばらくの間ぼー、とドアを見ていた僕だけれど、
どうしようもないので僕も寝ることにした。
お風呂は明日の朝早く起きて入ることにしよう。
と言ってもさっきまで生徒会室の仮眠スペースで寝ていたからか、
いっこうに睡魔はやってこない。
園田彰の傷付いた顔とか薫先輩のキスとか、蘭のこととか、
暗い部屋の中、ぐるぐると頭を回って仕方がなかった。
「おはよう。」
いつものように、自室のドアを開けると同時に挨拶をすると、帰って来たのは部屋の静寂。
「…?」
いつもなら、僕よりも早く起きて支度をすませた蘭が、「おはよ。」って迎えてくれる時間なのに。
僕は不思議に思って蘭の部屋の前に立った。
コンコン、と小さくノックをしてみるも、返事はない。
「らん?」
「…っあ、ごめん、今日さき行ってて?」
心配呼びかけてみたら、部屋から返事をしてくれて一安心。
だけど、その内容は今までにないもので、僕は少し戸惑ってしまう。
「どうしたの?具合でも悪い…?」
「ううん、そういうんじゃないんだ、ちょっとねぼうしちゃってさ…」
「寝坊…」
今まで1年以上蘭と同室で生活してきたけれど、
早寝早起きの蘭がこんなにギリギリまで寝ていることなんて滅多になくて、
やっぱり心配になってしまった。
「蘭、開けるよ…?」
基本的に 僕たちは部屋の鍵はかけていないから、ガチャリと音がしてドアは開いた。
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