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===第6章===
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5月も半ばに入って、新入生も高校生活に慣れてきたみたいだ。
中学からの持ちあがり組が多いから、寮生活なんかは今更珍しくもなんともないのだろうけど、
今までは生徒会メンバーを遠巻きに見ていただけの一年生たちも、
親衛隊に入って活動したり、見かけると声をあげたり。
僕も歩いていると、「姫さまー!」と声を掛けられるようになった。
そういう時は決まって手を振って笑いかけるけれど、それで終わり。
話をしたり、交流を深めるなんて機会は皆無だ。
それは僕が生徒会補佐だから、そして"姫"だから、仕方のないことなのだけれど、
中学の頃とは違う僕なのに、
結局人と深く関わることはできない自分は、やっぱり情けないなとおもう。
あれから、僕の周りでは少し変わったことがある。
ひとつは、園田彰が僕のことを呼びださなくなったこと。
自分で"専属"と決めたにも拘わらず、最近では僕に仕事をまわさなくなった。
生徒会は補佐がいても大変なくらい仕事が多い役職なだけに、この状態はあまりよくない気がする。
だけどわざわざ仕事をもらいに行くのも、
園田彰と関わる機会を増やしに行くようなもので、
僕が特別何か行動に出ることはなかったけれど。
それからもうひとつ変わったのは、
蘭と僕との距離が少し開いてしまったことだ。
僕とは逆に蘭は、生徒会室で仕事をすることが増える一方で、
寮の部屋でも顔を合わす機会が減ってしまった。
朝もコーヒーをゆっくり飲むことなしに出かける準備をして、
「ごめんね、早めに仕事終わらせちゃいたいから、先に行くね!」と言ってバタバタと出て行ってしまう。
別に態度とかに何か不自然なところがあるわけではないけれど、
やはり僕を避けているんじゃないかなとおもう。
「はー…」
「随分と大きなため息ですねえ。」
思わず深いため息をついた僕に、「隣いいですか?」と薫先輩。
いつもなら蘭と一緒に居るはずのお昼休み。
だけど彼は生徒会室で仕事をしているようだから、
必然的に僕はひとりになってしまう。
いつも二人、教室で食べていたのだけれど、
一人だとそういうわけにもいかなくて、
ここ1、2週間は食堂の生徒会スペースで昼食をとることにしている。
"食堂"といっても、そうとは呼べない煌びやかさがある場所で、僕は一人ため息が絶えない。
「幸せが逃げちゃいますよ?」という薫先輩の言葉にも、
「わかってはいるんですけどねえ…」、
そう言って苦笑することしかできなかった。
「また如月さんは生徒会室ですか?」
「あー…、はい、たぶん。」
「がんばりますねえ、彼。」
「あんまり蘭をこき使わないでくださいよー?」
「えぇっ、そんなつもりありませんけど…」
「あはは、冗談ですよ。」
「それを言うなら僕にじゃなくて、会長にしてくださいよ、もう。」
「え?」
なんでそこで、園田彰の話?
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