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向き合わなければいけないときがきた。
全部、全部。
今を乗り越えれば、これで最後。
もう二度と、哀しむことはない。
だけど。
だけど。
結局消えられなかった。
消すことだってできなかった。
過去は、僕の一部。
考えなきゃ。
薫先輩のことも、蘭のことも、翔兄のことも、
そして、
あいつのことも。
「帰りましょうか、雪さん。」
「っ、はい。」
「ファイルも、今日はいいです。
仕事は明日にしましょう。」
「、でも、」
「雪さん。」
「、」
「雪さんの悪いところ、ですよ。
自分を抑えて無理をする。」
「でも、」
迷惑、かけたくない。
「苦しいんでしょう?辛いんでしょう?
"笑顔"の盾も、持てないくらいに。」
「っ」
「あなたは、笑って堪えるひとですから。」
そう。
適当に笑って、"大丈夫。"、
そう言って僕はなんとかやってきた。
「でもね、心配かけたくないとか、
迷惑になってしまうとか、
あなたはもしかしたらそういったことを考えているのかもしれませんが…
人はそれを、拒絶と取ることもある。」
「っ拒絶なんて、」
「僕らはね、雪さん。
あなたのことを心配したいんですよ。」
「…、」
「あなたが哀しいときは一緒に心を痛めたいし、
あなたが頼ってくれたら嬉しくなる。
それはあなたが好きだから。
大好きな、あなただから。」
「…っ、」
「これは、僕のエゴです。
だけど雪さん、
あなたのことを、心配させてください。
あなたを想うこと、否定しないでください。」
ねえ、蘭。
『ぼくにはなにも、何もおしえてくれないのに…!』
『なのに、そんなふうにふみこんでくれるゆきは、ずるい』
やっと、分かったよ。
ずっと、心配かけたくないって思ってた。
大好きな親友であるキミに、心配かけたくない、って。
だけど、蘭も同じだったんだよね。
僕のこと大切だから心配してくれてる、って、思ってもいいかな…?
『ゆきはぼくのなにをみてたんだ………』
ほんと、僕は一体、蘭の何を見ていたんだろう。
ごめんね、蘭。
もう、間違えない。
間違えないから。
結局その日は、そのまま部屋に帰った。
薫先輩は部屋まで送ってくれると言ってくれたけど、
それは遠慮してエレベーターで別れた。
きっと、蘭は帰って来ている。
ドアの前で一人、深呼吸して心を落ち着けた。
今更かな。
今更だよな。
でも、蘭。
僕の話を聞いて欲しい。
「ただいま。」
ガチャリ、ドアを開けてそう言うと、
「おかえりー。」
いつも通りの声がリビングから返ってきた。
いや、違う。いつも通りではない。
蘭はいつも、ドアまで迎えに来てくれていたから。
…僕が、傷付けたんだ。
「遅かったね、雪。お疲れ様。」
「ん。ねえ、蘭。」
「?なに?」
「僕の…いや、
俺の話を、聞いて欲しい。」
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