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ソファに座っていた蘭は、びっくりした顔でこっちを見た。
僕が…いや俺がひた隠しにしていたことを、話そうとしている。
それが伝わったのだろう、蘭は少し戸惑っているようだった。
「ゆ、き…?」
「蘭…聞いてくれる?」
俺は蘭の隣に座りながらそう聞いた。
「う、うん…!
でも、いいの?無理に話さなくても、いいんだよ?」
あぁ。蘭。
優しすぎるよ、こんな時まで俺の心配をする君は優しすぎる。
「いいんだ。俺は蘭に聞いてもらいたいから。」
「ゆき…。」
ぽろり、蘭の目から涙が落ちた。
「雪…!」
「ちょ、泣かないでよ蘭!」
「だって…だってぇ…!」
蘭は俺にガバッと抱きついきながら、ぐすぐすと泣き始めた。
「いいよ、雪、
話そうって思ってくれただけで僕は嬉しい…」
ありがとう、と蘭は泣きながら笑った。
「ううん、蘭…俺は蘭に聞いて欲しい。
それで…相談に乗って欲しいんだ。」
こんな俺だけど、頼ってもいいかな…?
そういった意味をこめて蘭を見つめると、彼は少し驚いた顔をしたあと、
「ん、もちろん!」と笑ってくれた。
そこから俺は、ゆっくりと自分の過去について話した。
園田彰とは幼馴染だったこと、
そして、恋人だったこと。
「大好きでね、仕方なかった。
あいつさえいれば、だあれも、なあんにもいらないって思ってた。」
俺は昔のことを思い出しながら笑ったけど、蘭は泣きそうな顔をした。
ちゃんと、笑えてなかったのかな、俺。
「でも、幸せは長くは続かなくて。
家に帰るとさ、二人の家に、俺ら以外の人がいるんだ。」
「…、」
「正しくは、寝室か。ははっ」
「雪…」
「待って。まだ泣かないで?
蘭が泣くと、俺も我慢できなくなっちゃうから。」
「…ん。」
蘭はグッと顔に力を入れて堪えている。
「声がね、聞こえるんだ。
大好きなあいつと、俺以外の誰かの。
それからベッドが軋む音と、
ドアが開くと臭う独特のにおい…
そんで、
ショックを受ける俺を笑いながら見る、あいつ。
堪えられなかった。」
相手はいつもいつも違う人で、それだけ相手に困らないなら俺なんか手放してくれればいいのに、
あいつはそれをしなかった。
「別れられたらよかった。
嫌いになれたらよかった。
でも俺には、そんなこと出来なかった。」
愛してた。
何をされても、大好きで大好きで、
大好きだった。
「だから俺は消えることにした。
あいつの兄貴が理事長やってるこの学校に入れさせてもらって…」
「うん、」
「…そんで、消すつもりだった。」
「けす…?」
「そう。
あいつのことを、忘れるつもりだった。
あいつへの気持ちだけじゃなくて、全部…
あいつ自体を、なかったことにしようって。」
「っ、」
「あー、もう、蘭…まだ泣かないでって…
俺、も、泣いちゃう、だろ…」
「雪…!」
蘭はまた俺に抱きついてきて、さっきとは違う意味を持った涙で俺の肩を濡らした。
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