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===第7章===
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1年で、人はどれくらい変わるのかな。
白紙にしようとした気持ちは、
俺の中でどのくらい薄くなったのか、
分かる方法があったら教えてほしい。
「コーヒー、置いときますね。」
「あ、あぁ。ありがとう。」
書類とにらめっこする彼の机のはじに、コーヒーカップを置いた。
コトリと音がして、それを最後にまた部屋は静寂に包まれる。
放課後。生徒会室。
部屋には俺と、園田彰。
先ほどまで蘭がいたけれど、用があるとかなんとか言って出て行ってしまった。
もしかしたら生徒会室の前で息をひそめているかもしれない。
あの子ならそれくらい普通にやってしまいそうで、
想像したらちょっとだけ笑えた。
じ、と園田彰の横顔を見つめる。
何秒、何分、どのくらい経ったのか分からない。
そういえば、昔から俺はこの横顔を見ていることが多かったななんて思った。
見ているだけのことが、多かったな、なんて。
「、なに?」
「…え?」
「いや、随分と長いことこっち見てるから…」
「あ、あぁ、ごめんなさい、つい」
そう返すと、園田彰はぎくしゃくと書類をまとめてこちらによこす。
「悪い、指示を出していなかったな。」
「これのチェックですか?」
「あぁ。頼む。」
そして彼は「倉庫に行ってくる。」、
そう言って席を立ってしまった。
一度も"生徒会長"の仮面を外すことなく。
「ふー…」
うまくいかないもんだな、と一人ため息をつく。
"向き合う"、"近付く"、そう決めたはいいけれど、実際どうしたらいいのか分からない。
とりあえず生徒会長の補佐をちゃんとやろうと思って生徒会室に来た。
過去のことをどうこうする勇気はまだないから、園田彰と関わってみて少しずつ考えようって。
でも、最近の彼はずっとあの調子。
生徒会長として接してくるだけで、ヘンによそよそしいから、
何の進展もないまま一週間が過ぎていた。
「もう、遅いのかなー…」
呟いてみたら、それがリアルな想像となってくる。
それを振り払うように、頭を振ったらクラクラした。
「あー…どうしよう。」
どうしようもない。
どうしようもないけど、考えてしまう。
机につっぷしてみたら、ほっぺがひんやりとして気持ちよかった。
「それにしてもあのびっくりした顔、おもしろかったなー。」
思い出すのは一週間前、あの会議の次の日。
俺が補佐の席に座っているのをみた園田彰の顔。
「目ぇ真ん丸で驚いてたよなー、あいつ。ふふっ」
"補佐の席"とはもちろん、あいつが俺を"専属"としたときに設けた、
生徒会長机のはじにちょこんと作られた俺の、場所。
蘭の話では、彼が補佐をやっていた間はあの席が使われることはなかったらしい。
「あいつ、変なとこガンコだからな。あはは…」
思い出し笑いは、最後ほんの少し寂しい響きを残して。
あぁ、
早く、早く戻って来いよ。
俺、
また逃げたくなっちゃうだろ。
温度がちょうどよくて眠気が襲ってくる。
机に突っ伏していた俺は、あいつが帰ってくる前にそのまま瞼をおろした。
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