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「ただいまー」
カードキーを滑り込ませ、ガチャッと部屋のドアを開ける。
「雪っ!」
リビングの方から声が聞こえたかと思うと、
ドタドタドタドタ…
「おかえりーっ!」
「うわっ」
ガバッとすごい勢いで蘭が出迎えてくれた。
「ちょ、蘭!
いつも言ってるだろ!"おかえり"はおしとやかに!」
「えー、雪はおしとやかなお嫁さんがいいのー?」
「まぁどちらかといえば物静かなお嫁さんの方が…
…って蘭は俺の嫁じゃないし!」
「あははっ!おかえりダーリン!」
「…はいはい、おかえりハニー。」
そんなキラキラした目で見られたら、何も言い返せなくなっちゃうだろ誰でも…。
くだらないことを喋りながら、2人でリビングに向かった。
ポスッとソファに座ると、ぴょこぴょこ後ろを付いてきていた蘭も俺の横に腰を下ろす。
「今日はどうだった?」
「んー?いつも通り、かな。」
「うそ。何かあったでしょ。」
「…。」
なんでそんなに鋭いんだろう、この子は…。
「僕、心配してたんだからね!」
「…心配してた人が、部屋でせんべいボリボリ食べてんの?」
テーブルを指さしながら言ったら、ポカッとたたかれた。
「はぐらかさないの!」
「いや、はぐらかしたつもりは…」
「僕が、」
「、」
「僕が、雪の涙に気付かないとでも?」
蘭は俺の目尻を親指で拭う。
部屋に入る前、ちゃんと拭いたはずなのにな…。
「…俺さ、また分かんなくなっちゃった。」
「何が?」
「どうしたらいいか。何が正しくて、何が間違っているんだろうって。」
「あぁ、そんなこと?」
「そ、そんなことって…」
あっさりと言われて、なんだか力が抜けた。
「えー?だって、正しいも間違ってるも、ないでしょ。」
「?」
「強いて言うなら、雪が選んだ道が正しいんだよ。」
「何だソレ。」
「ふふ、簡単でしょ?」
「簡単だけどさあ…」
「大丈夫。
雪は、間違ってないよ。」
蘭はそう言って俺の頭を撫でた。
このとき思ったんだ。
あぁ、俺、
誰かにそう言ってもらいたかったのかもしれないな、って。
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