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知ってる。
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俺はその美しい音色に自然と惹かれるかのように、
視線をその音のする方へと向けた。
この、ガヤガヤうるさい中で、ほんの少し聞こえる程度。
俺自身、なんでそんなに惹かれるのかわからなかった。
視線を向けた先にいたのは、
音楽室の片隅でひっそりとチェロを弾く1年生。
それを見た途端に俺の中に生まれるのは、
とんでもない位の既視感。
彼と会ったことなんて無いはずなのに。
ましてやあんな綺麗なチェロの音を出す人なんて、
初めて見たはずなのに。
俺は彼を……
知ってる。
彼の音、
彼の弾き方、
彼の表情まで、全て、俺は知ってる。
記憶には残ってないのに、
俺の目が、耳が、覚えている。
だから、凄く懐かしい。
俺はきっと、チェロを弾く彼が大好きだった。
こんなことが分かってしまうくらいには。
俺はゆっくり歩み寄る。
その彼にー……
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