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鬼だ・・・
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いつまでもクヨクヨしてはいられない
俺も頑張らないとね
確かにまだ悲しいけど、考えていても母さんは戻らないんだ
だったら、来年のインターハイに出場して優勝する事を考えよう
きっと、天国の母さんもそれを待っているに違いないしね
「燕羽、行くぞ」
「うんっ!」
授業中はまだ悲しい
ぼーっとしていると昔の思い出が甦って来るから
お金が無くても、ひと月に一度だけ外食をしていたっけ
すごく楽しみで、幸せだった
ほとんど、俺の食べたい物ばかりになっても母さんは笑顔で連れて行ってくれた
そう
あいつが現れるまで幸せだったのに
あいつが突然現れてお金をせびるようになった
母さんは仕事を増やして俺を高校に行かせてくれた
あいつは仕事もしないで毎日ギャンブルばかり
母さんの給料はほとんどあいつに奪われていたんだ
でも・・・・・
母さんは毎日工夫してお腹一杯ご飯を食べさせてくれた
そして、月に一度の食事にも連れて行ってくれた
俺は家計の事がわかっていたから、安い物でいいと言うと、母さんは「じゃ、今日は母さんの食べたい物にするわね」って言って、焼肉とかステーキを食べさせてくれた
みんな俺の大好きな物ばかり
服だってそう
母さんは何年も新しい服を買っていなかった
でも、俺の服は買ってくれた
いらないから母さんの服を買いなよって言っても、「母さんは今更お洒落しても仕方が無いでしょ?」と言って笑っていた
たまに深夜、ほころびた服を縫っていたのを知った時、涙が出そうになった
「燕羽~?」
「あっ、ごめん」
「ぼーっとしてどうしたんだ?」
「ううん、何でもない」
「そっか、じゃ準備しろよ」
「わかった」
・・・・・・・・・・うっ、また一人で運ぶのか
これも筋トレだと思って頑張ろう
「ハァハァ・・・・運んだよ」
「じゃ、走れ」
「あい」
そしてグランド10周
キツイけど、苦しい時は全てを忘れられる
頭が空っぽになるしね
今日も跳んでくれるかな
見たいな・・・・翔が跳ぶ姿
「・・・・・・・・・・・って!地面に絵を描いて遊んでるし!!」
何してんだろう
蟻でもいるのかな?
「ハァハァ・・・・終わった・・・・ハァハァ」
「んじゃ、柔軟」
「ひぃ!」
休ませてくれると言うスキルは無いらしい
「いでででっ!!変な筋がピキッて!!」
「死なないから大丈夫だ」
「いででっ!!さける~~~!」
「どこがだよ」
「どこがって・・・・どこだろ」
「あほ!」
「いだだだっ!踏んでる踏んでる!!」
「だな」
「だなって・・・・・」
もう色々な筋肉が痛すぎ!!
そして足で背中を踏まれて泣きそう
「んじゃ、スクワット100回な」
「へ?」
「やれ」
「ひーーん!」
俺はプロレス同好会にでも入ったのか?
ここは陸上部のはず
ううっ・・・ふくらはぎが痛いよーー
足がつるよーーー
「も、もう・・・ダメ」
「じゃ5分休憩な」
「死ぬ・・・・・」
呼吸が漸く整ったら5分経ってるとか
「じゃ、こっち」
「うん」
ん?
今日は跳ばせてくれるのかな?
でも、そんなに至近距離からは無理だと思われ
あっ・・・
さっきの落書きかな?
でも、線しか書いてないけど
「ここから跳べ」
「えっ、無理だけど」
「どうして?」
「どうしてって・・・助走が短いし」
「で?」
「でって・・・・」
「やれ」
「わかった」
絶対無理っ!
いじめですか?
助走も5歩ぐらいしかないし
でも、やるしかないか
「んじゃ・・・・行きます」
「ああ」
俺は出来る!
やれば出来る子なんだ!
絶対跳べ・・・・・るはずもなく
「あはっ」
「ふーん」
ああん、そういうのが一番怖いっ!
「あ、あの・・・・さ」
「何?」
「翔はどうなのさ?跳べないよね、普通は無理だしー」
「いちいちうるさい奴だな」
「だって~」
「お前は自分の目で見なければ信用しないのかよ」
「そうじゃないけどーーーー」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ほらね
跳べるわけ・・・・・・
「ええっ??}
「跳んだぞ」
「ち、ちょっと!おかしいよね?助走も無しで?」
「これぐらいなら跳べるし」
「ううっ・・・・」
俺にはこれぐらいでも跳べないし
しかも翔にはハンデがあるのにどうして?
「んじゃ、普通に助走つけて跳んでみろ」
「わかったー」
助走つければこれぐら・・・・・・
「ちょっと!!」
「何?」
「何でバーを上げるのさ?」
「この高さで跳んでも意味はない」
「そんなぁ~~」
しかも一気に高さを上げるとか
無理
無理です
「やれ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「あと10周行くか?」
「わかったよ!!」
もう・・・鬼だ!
天使なのは顔だけで中身はなまはげだ!
ん?なまはげって鬼だっけ?
「早く」
「あいあい」
もしかしたら跳べるかもっ!
そう、俺は頑張れば出来る・・・・・わけもなく
「あはっ」
「だろうね」
「えっ?」
「今度はこの線で踏み切ってみろ」
「えっ、怖い」
「やれ」
「・・・・・・・・・・・ううっ」
今まで俺の踏み切りの位置とはかなり違うような
と言うかこんなに端っこから跳んだら絶対無理だと思うんだけどな
「あっ、そうそう」
「ふぇ?」
翔がこっちに来た
もしかして殴りに?
「ここからな」
「えっ、助走が合わないよ」
「だから踏み切りの位置を変えたんだろ」
「そうだけど・・・さ」
「早くしろ」
「わかった」
絶対無理だよ
助走が合わないよ
でも、やらなければ本当に殴られそうだし
行くしかない
「行きます!」
「ああ」
今度はどんな言葉で罵られるんだろう
と言うか罵られてはいないけど、ふーん・・・は辛い
指示された場所から走り出し、線の・・・線・・・見えないっ!
「踏み切れ!」
「ひゃ!」
およ?
う、うそん
跳べた
しかもまだ若干余裕があったような
「やった!!」
「やったな」
「やったよ!!跳べたよ!!」
「今のタイミングだ」
「うん」
それに何だか跳びやすかった
不思議~
「もう一度」
「うん」
「今度は自分で跳べよ」
「わかった」
ふふん
楽勝だもんね
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「だろうね」
「何で?どうして?」
「踏み切りが遅い」
「なぬ!」
「もう一度」
「うん」
今度こそ
「・・・・・・・・・・・・・・・ふぇ」
「今度は早い」
「むむっ」
「跳べ」
「あい」
今度そこ!!
「・・・・・・・・・・・・・・・・・ううっ」
「まぁ、仕方ないさ」
「嫌だ!跳べるまでやる」
「オッケー」
悔しいし
跳べたんだから絶対跳べるし
どこだっけ
最初の場所
最初の感覚
思い出せ
「あっ」
これは神の仕業?
踏み切りの場所が輝いてる
よし、あそこで踏み切れば跳べる!
「やった!やったよ!!神が降臨」
「クスッ」
「ん?」
「じゃ、今日は終わりにしよう」
「うん」
そう言って踏み切りの場所で何かを拾っていた
「ぬ?」
何かをポケットに入れた
何だ?
「何入れたの?」
「何でもない」
「何さ~」
「ったく・・・・・これだよ」
そう言って取り出したのは小さなガラスの石
キラキラ光ってる
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・って!!
「お前はやれば出来るんだから頑張れよ」
「う、うん」
先に褒められてしまった
そうだよね
やらなきゃ出来ないんだ
明日も頑張るぞ!!
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