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昨日から燕羽が熱を出して学校を休んでいた
きっと、疲れが一気に出てしまったのかもな
俺は一人で学校へ行き、一人で帰る事にした
車もいいけど、たまには歩かないとね
とは言ったものの・・・・
まさか体育がマラソンに変更になるとはね
水泳以外なら見学はしないけど、義足が予備だった事をすっかり忘れていた
体育は6限目だったし、そのまま誰もいない教室で休んだけど痛みは治まりそうに無い
何とか着替えて学校を出たのはいいけど・・・・・メッチャ痛くて耐え切れず思わず座り込んでしまった
う~ん
困ったな
まだ屋敷まではかなりあるし、和海に連絡したら来てくれるだろうけどそれはな・・・・
このままはずしてしまいたいけど、それも出来ない
義足って意外と重いしね
そんな事を考えていると、見た事のある顔が目の前にあった
こいつらは・・・・・・てか、何で?
しかし・・・相変わらず無表情だな
でも、体は明らかに改造されていた
あいつの仕業だとは思うけど、よく頑張ってるな
今日もしごかれた顔をしてるし
初めて見た時にも感じたけど、何故こいつらは死んだような瞳をしているんだろう
生きても死んでもいいような表情
感情が無いわけでは無さそうだけど、どうしてだ?
そんな事を考えていたら、足の事がばれてしまった
しまったな・・・・・でも、仕方が無い
でも、驚きもしない
一瞬、表情が変わったような気もしたけどね
そして考えた
少しぐらいならこいつらの事を知ってもいいかなってね
乗せられた車は和海が使っている車と同じ
と言う事はこいつらも金持ちって事か?
でも・・・・・何となく想像とは違っていた
俺の広告を見つけて女かとか尋ねるし、屋敷では無表情でめちゃ痛い消毒をされるし、クリスマスの長靴の話を真顔で聞いてきたし
もしかして・・・・・こいつらは子供のまま愛情を知らずに生きて来たからこんなに無表情なのか?
と言うか、素直だよな・・・・・
ココロは子供のままって感じだ
う~ん
もう少しだけ付き合ってみようかな
「お前達、ハイジャンは楽しいか?」
「わからない」
「うん、わからない」
「と言う事はまだ跳んだ事が無いのか」
「無い、毎日走ってる」
「うん」
成程ね
広い庭を見つめ、驚いた
こいつらもハイジャンの用具を揃えていたんだ
・・・・・・・・・・・・まだ使い方を知らないらしいけど
「ねぇ、背中見せて」
「背中?」
「うん」
「いいけど・・・・」
何だいきなり
そのままシャツをめくって背中を見せた
「羽が無い」
「はい??」
「見えたんだ・・・・羽」
「僕も見た」
「あの競技場で翔が跳んだ時、見た」
「そうだね、見えた」
「あーーー、そっか」
足も痛みが薄れて来たし、お礼だな
義足をつけて歩き出した
「来い」
「うん」
「うん」
そのまま庭に向かい、置かれていたハイジャンのバーを上げた
「僕の身長よりも高い」
「そうだね、高い」
「そこから見てろ」
「わかった」
「うん」
何とか跳べるかな
まぁ、この高さだし大丈夫か
数回、屈伸をしてその場でジャンプして呼吸を合わせた
よし
行けるな
そのまま走り、バーを飛び越えた
この感じ・・・・やっぱいいよな
「羽が・・・・」
「見えた」
「でも、残念ながら俺が跳べるのは一度だけだ・・・・やってみるか?」
「うん」
あっ・・・・
こいつら背面の跳び方知らないんじゃ・・・・・・
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「跳べなかった」
嘘だろ
「背面の跳び方を?」
「今見てた」
「そうか」
やばいな
こいつら・・・・・マジで天才だ
一度見ただけでフォームは完璧だ
「今のスタートラインから半歩下がって、ここで踏み切ってみろ」
って!何教えてるんだ俺っ!!
「わかった」
そして・・・・・・・・・・・
「跳べた」
「うん、跳べたね」
やばいぞ
かなりまだ余裕があった
こいつらどこまで跳べるんだ?
「翔」
「ん?」
「すごく気持ちいい」
「そうか」
「うん・・・・」
マットに寝たままほんの少しだけ微笑んだ有無
その顔が印象的だった
・・・・・・・・・・・・・・じゃなくて!
マジでやばいだろ
勝てるのか?
このままでは絶対勝てないだろ
「皆無も跳んでみて」
「うん」
そして・・・・・
「ねっ?気持ちいいでしょ」
「うん・・・・・気持ちいいね」
マジかよ
あっさり跳べる高さじゃないのに
こいつらは・・・・・・
「さて、足の痛みも引いて来たし俺は帰るよ」
「夕食の準備が出来てる」
「そうだね、出来てるから一緒に」
「えっ・・・」
断れない・・・・・・よな
「じゃ、ご馳走になったら帰るよ」
「うん」
「戻ろう」
はぁ・・・・・・
和海が今頃必死に俺を捜してるかも
そして広いダイニングで食べる食事はとても寂しかった
「あのさ・・・・」
「うん」
「いつも二人ならこんなに広いテーブルは必要ないだろ?」
「昔からこれだったから」
「ならさ、隣で食べればいいだろ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「皆無、来い」
「うん」
これじゃ、会話も出来ないし楽しくない
俺が有無の隣に移動して、皆無がその隣に座った
「こうすれば話も出来る」
「食事中に会話は」
「するものだろ?」
「そうなの?」
「そうなの!」
嘘だけど、こいつらにはもう少し人としての感情が必要だと思った
「ところで、二人は清新学園だったよな」
「うん」
「賢いんだな」
「わからない」
「そうか」
「有無は何が得意なんだ?」
「得意なもの?」
「ああ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・さぁ」
「じゃ、皆無は?」
「今、バイオの研究をしているけど機材が足りない」
「へぇ、皆無は科学が得意なんだ」
「得意と言うか、考えるのが好き」
「成程」
「あっ・・・・・」
「どうした?有無」
「得意と言うか、気になる事はある」
「うん、何だ?」
「クレパスの深さ」
「・・・・・・・・・・・・・確認はしないほうがいいな」
「うん」
いきなりそれかよっ!
しかもクレパスって・・・・・日本にはないだろ
「僕も気になる事が」
「何だ?皆無」
「鹿の角」
「角?」
「切っても痛くないの?どうしてオスにしかないの?」
「角は切っても痛くないよ、まぁ・・・爪と同じだと思え」
「爪・・・・」
「メスの事は知らないけど、鳥でもさオスのほうがメスより綺麗だろ?人間は逆だけど」
「・・・・・・・・・・・・・人間には興味ない」
「そうか」
バイオ研究とかしている奴が鹿の角の心配かよ
面白いな
「しかし、この料理は美味しいな」
「そうかな・・・・わからない」
「うん、いつも同じだし」
「えっ?」
「何を食べても同じ・・・・それだけ」
「そうだね」
「そうか?牡蠣とかさ、カボス絞ってポン酢で食べると美味いぞ?」
「牡蠣?」
「そそ、生のな」
「食べた事無い」
「うん、ないね」
「あ~、勿体無い生き方してるな~」
「牡蠣・・・・・・」
「そそ、後はそうだな・・・・・クレープ!」
「クレープ?」
「生クリームとイチゴのな」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「後は?」
「ん~、大アサリとか」
「もしかして貝が好きなの?」
「だなー、ムール貝も好きだけど日本は高いし」
「へぇ」
「地中海に行くとさ、バケツに一杯入った奴がめちゃ安い!」
「そうなんだ」
「パリは焼き栗が美味い!歩きながらよく食べてた」
「栗・・・・・」
「ドイツはそうだな・・・ん~~、やっぱブルストかな」
「ブルスト・・・・・」
「ノルウェーはサーモンでアイスランドはラム」
「いろんなところに行ってるね」
「まぁ・・・仕事を兼ねてたしな」
「そうなんだ」
「イタリアはパスタでスペインはパエリアかな~」
「わかった」
「うん、わかった」
「まぁ、今度食べてみろ」
「うん」
「うん」
こうして結局屋敷まで送ってもらい、二人と別れた
当然、和海は怖い顔をしていたけど足を見て逆に心配させてしまった
有無と皆無か
いい選手になるだろうけど・・・・・・あいつが監督だから心配だ
「翔~~~!心配したよぉ~~~!」
「お前は寝てろ!」
「だってぇ~!」
「熱は?」
「んと、38度」
「寝ろ!」
「喉が」
「わかった、待ってろ」
キッチンに向かおうとしたら楓が止めた
「俺がやるから翔は休んで」
「でも」
「いいから」
「わかった・・・・・じゃお願いね」
「うん」
珍しい
楓も燕羽が心配なのかな
そのまま部屋に向かい、今夜は寝る事にした
「喉渇いた・・・水・・・・・」
「燕羽」
「楓さん?」
「はい、飲める?ストローあるから」
「ありがとう・・・・・」
ストローをくわえ、一気に飲んで・・・・・・泣いた
「甘っ!!!」
「あれ?プリンシェイク嫌い?」
「うっ・・・・・・」
いやいや・・・・・嫌いじゃないけど、今は素直に水が飲みたかった
でも、いえない自分が悲しかった
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