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ー気紛れな猫ー
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今日もこの丘の上の図書館に来ていた
俺は勉強嫌いだし、普通ならわざわざこんな丘の上の図書館に来る事はない
だって、駅の近くにも図書館はあったから
そもそも、図書館なんて無縁だと思っていたのに・・・・・そう、あの日まではね
ー一ヶ月前ー
「暑い~」
夏休みなのにこれと言ってやる事もないし、お金が無いから遊びにも行けない
家にいても酔っ払いの母親にくだを巻かれるだけだしね
母親は父親が事故で死んでから人が変わった
その理由は保険金
父親の残した少ない保険金が母親を変えてしまった
今まで大金など手にした事が無い人間が大金を手に入れると、馬鹿みたいに使ってしまう
金銭感覚を失ってしまうのだ
使ってもお金が湧いて出るわけでもないのにね
ほんと・・・あっと言う間に保険金が消えた
そして母親は酒に逃げるように毎日浴びるほど飲んでいた
何に使ったか、聞くのも馬鹿らしい
毎日、買い物や旅行、親戚を連れて豪華な懐石料理三昧
金が無くなるとまた帯つきの万札を下ろし、遊びまくる
一度だけ心配して母親に注意したけど、無駄だった
「私のお金をどう使おうが関係ない」の一言
その結果、俺のバイト代に頼るような生活
俺は、何とかバイトの給料で学費を払い残りを家に入れていたけど、母親は毎日飲んでばかりで、親戚にも借金をしていた
その結果、俺は夜のバイトに変えて毎日寝不足の日々が続いていた
そして気分転換にどこかへ行こうと思い、家を出た
でも、この暑さは辛い
カフェに行っても長時間はいられない
そして考えたのがこの誰も来ないような丘の上の図書館だった
涼しいし、長時間いても文句は言われない
夏休みのワークもここでやれば一石二鳥だしね
「そろそろ閉館です」
「あっ、はい」
急いで教科書をしまい、本を戻し図書館を出た
「はぁ・・・」
来る時は上りで帰りは下り
この坂道は少しきついかも
「あっ!」
突然強風に煽られて髪を押さえた瞬間生き物のようにプリントが宙を舞った
しまった!
プリントがぁ~!
どうしよう、無くしたらまたやり直しだ
「うわぁぁーーー!待ってぇ~!・・・・えっ?」
宙に舞ったプリントに手を伸ばした人が目の前にいた
誰だろう
太陽で反射した髪がとても綺麗だった
「はい、これで全部?」
「あっ・・・はい、ありがとうございます、助かりました!」
「よかった、じゃ」
「はい」
そして俺は初めて恋に落ちた
名前も知らない人なのにね
しばらくその場に佇み、その人の後姿を見つめていた
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