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それからしばらく会う事はなかった
毎日、カフェを覗いたけど翔はいなかった
「はぁ・・・」
溜息をつきながら坂を下りる途中、声を掛けられた
高そうな赤い車
乗っている人も髪が銀色でとても綺麗な人だった
「君」
「はい」
「この住所を知っていますか?」
そう言いながら見せられた綺麗な絵葉書
裏にローマ字で住所が書かれていた
「えと・・・はい、ここならこの坂の上を上った辺りです」
「そうですか、ありがとうございました」
「いえ」
大人って感じだったな
シルクのスーツがよく似合っていた
サングラスをしていたけど、きっと顔も綺麗なんだろう
「でも・・・誰に用事なんだろう」
首を捻りながら坂道を降り、駅に向かった
それから数日後の夜・・・・・
「いらっしゃいま・・・・」
「やあ、ここでバイトしていたんだね」
「はい」
「おや、君は・・・」
「こんばんは」
「翔、彼に住所を尋ねたのですよ」
「そうなんだ」
何?
翔の知り合いだったんだ
「お飲み物は」
「俺はジンリッキーで、彼にはギムレットを」
「かしこまりました」
すごく仲がよさそう
そしてやはり彼も綺麗な顔をしていた
お似合いの二人って感じ
すごく心が軋む
すごく心が痛い
翔は笑顔で彼と話をしていた
こんな風に笑うんだ
見たくなかったな
「燕羽もどうぞ」
「俺は」
「ノンアルコールならいいだろ?」
「はい、頂きます」
「どうぞ」
でも、会話には入れない
時折わからない国の言葉で話してるし
何だかとても遠い国の人みたい
当たり前か
俺達は友達じゃないし・・・・・
俺が勝手に惹かれただけだし
「バイトは何時まで?」
「11時です」
「そう、じゃ待ってるから食事でもどう?」
「でも」
「彼は仕事でもうすぐ会社に戻るらしいし」
「いいんですか?」
「もちろん」
「はいっ!」
嬉しい
すごく嬉しい
何だか特別みたいで嬉しい
そして彼が店から出て行き、その後翔といろんな話をした
その話はとても楽しくて、久しぶりに笑った
「あっ、そろそろ」
「じゃ、外で待ってる」
「はい」
急いで着替え、外に出た
心は羽がついたかのようにふわふわしていた
「お待たせしました」
「お疲れ」
そう言って笑う顔にまた見とれてしまった
「美味しいイタリアンの店を見つけたんだけど、そこでいいかな」
「はい」
「深夜でもやってるから」
「そうなんですか」
「と言うか、敬語やめない?」
「でも」
「堅苦しいし」
「・・・・・わかった」
「オッケー」
その店は最近出来た店だった
イタリアンのお店だったんだ
高級そうだから気にもしていなかった
「どうぞ」
「ありがとう」
ドアを開けてくれたのは翔だった
ドキドキしながら店内に入ると、そこは異国だった
「窓際の席にしよう」
「うん」
窓際に向かい、向かい合わせに座った
「好きな物を食べてね」
「・・・・・・・・・・うん・・・う~ん」
メニューが全部イタリア語
勿論読めない
「お勧めにしようか」
「任せる」
「わかった」
そして翔は流暢なイタリア語で何かをオーダーしていた
「ワイン飲む?」
「少しだけ」
「どうぞ」
「ありがとう」
ワイングラスに注がれた深紅のワイン
アル中の母親を見て来たから、お酒は飲まないと決めていたけど少しならいいよね
酔わないと、会話もまともに出来無さそうだし
うん・・・
少しのつもりだった
でも、つい飲みすぎてしまった
「大丈夫?」
「ごめん・・・うっ」
「ほら、全部吐いた方がいい」
「ううっ・・・大丈夫だから」
「いいから」
「ごめん」
高そうな料理も、お酒も全部吐いてしまった
俺の馬鹿・・・
「もう平気・・・ごめんね」
「飲ませた俺も悪いんだし気にしないで」
「うん・・・」
そう言って背中をさすってくれた
すごく優しい人
「ご馳走様でした」
「うん、またね」
「はい、おやすみなさい」
「おやすみ」
そしてタクシーで家まで送ってくれた
タクシーの中でずっと翔にもたれていた
すごくいい匂い
何の香りだろう
ぼんやりタクシーを見つめ、溜息をついた
今度はいつ会えるんだろう
今度会った時はもう少し仲良くなれるかな?
仲良く・・・俺は何を翔に望んでいるんだろう
この鼓動は何だろう
友達ではない
俺はもっと別の意味で翔を見ていた事に気付いた
その日から、俺は苦悩の渦の中に吸い込まれるようにして流されて行った
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