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無言で寮に戻り、部屋に向かった
「ただいま」
「夕食はもう終わったよ」
「そっか」
「・・・・・・・」
「ん?」
「何でも無い」
繭にもすぐに知られてしまうんだろうな
もう俺はここにいない方がいいのかも知れない
「卒業まではまだ時間があるけど」
「うん」
「僕は翔と卒業写真が撮りたい」
「まだ先の話だろ?」
「約束」
「・・・・・・・」
「繭」
「翔は友達だから、失いたくない」
「ごめん、俺は」
そんな約束は出来ない
返事に困っていると繭が言った
「和海に教えたのは僕なんだ」
「教えた?」
「うん、自然の力と調和出来る事を」
「それって」
「冬矢には教えなかった、理由は嘘つきだから」
「お前・・・」
「でも翔が幸せならそれでいいと思った」
「どうして繭が?」
「昔、和海の家の書斎で読んだから」
「読んだ?」
「和海とかくれんぼをしていて僕は書斎に隠れた、隙間がある本棚に隠れようとしたら扉が開いて古い本を見つけた・・・その時は意味がよくわからなかったけど何となく理解は出来た、そこに書かれている事が本当なら隠す必要は無い、でも隠されていた・・僕、翔と出会うまで色なんてどうでもいいと思っていたけど今は色の無い世界は嫌いだから」
「ずっと黙っていたのか?」
「言うつもりは無かった、でも僕の鳩が教えてくれたんだ」
「鳩?」
「僕達のような家系は常に裏切り者が多いから情報を常に伝える鳩がいるんだ」
「うん」
「和海の父親が翔を狙っている事も知っていた」
「そっか」
「和海には選択を迫られていた・・・でも実行出来なかった、翔が好きだから」
「・・・・・・・・・・」
「それで気付いたんだ、本が隠されていた意味を・・・和海の父親は全てを手に入れたくて隠していたって事を・・・あの本は偶然見つけたから僕が読んだ事も知らないはず」
「ようするにどちらかが死ななくてもよかったって事か?」
「そう言う事、それは父親が一番知られたくなかった事、世界を二分にしたくないから」
「どうして和海に?」
「和海はああ見えて、意外と優しい人だし嘘が下手だから」
「なるほどね」
「翔に近付きたくても消えろと言われたみたいだし、翔が嫌がっているのも知っていたんだ」
「確かに言ったかも」
「言葉に出来ない和海の心が翔に嫌な音を聞かせたんだよ」
「お前すごいな、そこまでわかってて今まで黙っていたとはね」
「その隙をついて翔を奪ったのが冬矢」
「・・・・・・・・・・」
「冬矢は絶対顔には出さないし心が読めない人だから」
「落ち込む・・・」
「翔は愛する相手を間違えただけ」
「間違えた?」
「その本の最後に書かれてた・・・自然を操れる物と融合した時その二人は生涯その人を愛するだろう、そしてその力に及ぶものは誰一人としていない」
「調和と融合は違うよな?」
「それは翔次第」
「俺次第か」
「とにかく、翔達の敵は冬矢じゃない」
「そうだな」
「和海だけでは勝てない」
「俺にどうしろと?」
「冬矢が消えた事はもう耳に入っているはず、だから今度は翔と和海が狙われる」
「穏やかな学園生活は送れないのか」
「それも翔次第、だから卒業写真を一緒に撮って」
その意味の深さはわかる
でも俺達に出来るのだろうか?
融合ねぇ・・・簡単に言ってくれるよな
「わかった、俺だけ逃げるのは卑怯だしな」
「ありがとう」
「それで、時間は?」
「わからない」
「そっか」
「・・・・ごめんね」
「繭のせいじゃないし、教えてくれてありがとう・・・少し散歩して来る」
「わかった」
部屋を出て、廊下で考えた
俺はどうなんだ?
冬矢の事は愛していた
でもあんな裏切られ方をした
そんな俺を助けてくれたのは和海
本当に嫌いだったのか?
「わかんないや」
そのまま教会に向かい椅子に腰掛けた
ここには確かに愛があったはず
でもそれは嘘だった
あの温もりも微笑みも全て作り物
信じられないけどそれが真実
嘘のつけない和海だから俺は危険を感じた
嘘が上手い冬矢だから心を許した
「ばかじゃん・・・」
でもやっぱり辛いかも
この悲しみはどこにぶつければいいんだろう
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