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氷龍の話
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若い頃から怖い物知らずだった俺
俺が全ての世界を動かせると思い込んでいた
でも、どうせやるならもっと大きな事がやりたかった
その結果が、テロリスト
ふんぞり返る政治家や金持ち相手の頭脳ゲームはなかなか魅力的だった
虫けらのように人を殺すのが楽しいと思っていた
いろいろな策略を練って世界中の人間を脅し、殺し続けた
罪の無い人間を笑いながらね
金も思いのままに入って来た
でも、一番信用していた同志と言う恋人に裏切られた
そいつを殺したと同時に、そいつが密告した警官達に一斉に銃を向けられた
そのまま撃ち殺されても当然の罪だが、俺は殺されなかった
判決は死刑・・・・・そして刑が執行される当日、俺は目隠しをされここに連れて来られた
俺を殺せない理由は、地下に潜っていた同志の無差別テロを恐れていたのだろう
ここに連れてこられた時は、拷問に近い厳しい取調べが続いた
でも、何も聞き出せないと諦めたらしく、拷問で傷付いた俺をこの部屋に押し込んだ
最初にこの部屋に居たのは俺を含めて4人
翔と和海、そしていつも怯えていた名前も知らない奴と俺
ここで名前を知っても仕方が無い
でも、翔と和海の名前はすぐに知った
「痛そうだね」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
最初に声をかけて来たのは金色の髪をキラキラと輝かせながら微笑んだ綺麗な男・・・
それが翔
なぜこんな所にいるのかが不思議だった
虫も殺せないような奴に見えたし、もし天使がいるのならきっとこいつのような顔なんだろうと思ってしまった
「和海、手当てを」
「はい」
そして俺を手当てした男が和海
銀髪の綺麗な物静かな男・・・・・・すぐに同じ匂いを感じた
こいつは俺以上に頭が切れそうな感じがした
最初のイメージはそんな感じだった
「一応抗生剤を御飲み下さい」
「すまない」
なぜそんな薬を持っているのかなんて、その時は考えた事もなかった
怪我をしていてもきつい労働の毎日
食事は餌以下のごみだった
生きている意味があるのだろうかと毎日考えていた
別に死んでも構わない
俺の人生はもう終わったのだから・・・・といつも思いながら生きていた
そんなある日、同じ部屋の男が声をかけて来た
「これを」
「何だ」
「素手では辛いでしょ?僕の使っていた軍手です」
そう言って穴の開いた軍手を差し出した
それを見た瞬間、笑えた
俺にこんな雑巾まがいの軍手をはめろと?
カシミヤや皮の手袋ならまだしも、使い古しの軍手とはね
「結構だ」
「でも、凍傷になると厄介ですよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「どうぞ」
「お前はどうするんだ」
「僕は昔のがありますから」
確かに凍傷は厄介だ
素手で作業していたので、手の平は傷だらけだった
「使わせてもらうよ」
「はい、どうぞ」
それがそいつとの初めての会話だった
それからそいつとよく話をするようになった
名前は椿と言っていた
何をしたかなんてどうでもよかった
ここにいる時点で皆同じなんだ
俺はここで初めて出来た同志のように思っていた感情が、次第に愛情に変わるのを感じていた
椿はとても優しい奴だった
花が好きで、よく植物図鑑を開いて読んでいた
男しかいない空間で恋愛関係になる事は容易い
ヤルだけの男もいたが、俺は本気で椿を愛していた
寒い夜は二人で寄り添うようにして眠った
病気をした時は、寝ずに看病した
このままこいつとここで人生を終わらせてもいいとさえ考えていた
そんなある日・・・・・
翔が俺を誘った
ここへ来て初めての事だった
しかし俺には椿がいたし、その誘いを無視してしまった
もし、椿がいなければその誘いに乗っていたかも知れない
地獄の牢獄で天使を抱けるのならね
でも、俺の天使は椿だったから
何も考えずに誘いをあっさり無視してしまったんだ
その時翔の事を知っていれば、椿に泣き叫ばれても誘いに乗っていただろう
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