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結局、眠れないまま朝を迎えた
体は相変わらず痛い
でも、見掛けは普通と変わらない
「楓、食堂に」
「ごめん、今日は食欲がなくて」
「えっ、大丈夫?」
「うん、あのさ・・・・・」
「何?」
「・・・・・・・・・・・何でもない、ただ氷龍と行って来てねと言いたかっただけ」
「そか・・・わかった」
「ごめんね」
本当は違う事が言いたかった
もう俺に話しかけないでと言うつもりだったけど、言えなかった
「楓、顔色が悪いな」
「そう?」
「ああ、大丈夫か?」
「うん、燕羽の事を・・・・・」
「わかっている」
「ありがとう」
氷龍は理由を話さなくても分かってくれているような気がした
何となくだけどね
翔は和海と話をしていたけど、きっと会話を聞いているに違いない
それが気になって何だか体調がおかしい
朝から頭が痛いし
そして繭が迎えに来た
「仕事場へ案内します」
「うん」
話すことは特にないので、黙って後ろを歩き時折鋭く痛む頭を押さえた
「ここです」
「普通の部屋だね」
「そうですね」
「俺は何をしたらいいの?」
「クリーニングから戻って来た制服をビニールから取り出し、名前を照らし合わせてこのロッカーにしまって下さい」
「そんな仕事でいいの?」
「ええ」
「わかった」
今までとは違う単純な仕事
部屋はとても暖かい
「仕事が終わりましたら時間までここで自由に過していただいて結構です」
「・・・・・・・・・・・・・・うん」
燕羽や氷龍は極寒の中で作業しているのに、俺は暖かい部屋で簡単な仕事か
何だか複雑
「わからない事は?」
「特には」
「そうですか、では」
「うん」
歩き出した繭が足を止めて振り返り、俺を見つめた
「体調が悪いのでは?」
「そんな事はな・・・・・いっ!」
何?
こんなに激しい痛みを感じたのは初めてで、思わず頭を押さえて蹲った
「楓?」
「・・・・・・・・いた・・・・い」
「頭が痛いのですか?」
「・・・・・・・ううっ」
返事も出来ない程の痛み
どうして?
今まで頭痛なんて起きた事はないのに
そして余りの痛さに意識が飛んでしまった
気付いたのはソファーの上だった
ここは・・・・繭の部屋だね
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「目が覚めましたか?」
「俺は」
「心配でしたので気を失っている間に診察を」
「そう」
何時間気を失っていたんだろう
全くわからない
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「風邪?」
きっと、環境が変わったからかな?
今は痛くないし
「繭、どうしたの?」
「今まで頭部に痛みを感じた事は?」
「ん~、無いかな」
「全くですか?」
「うん・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
繭の顔が何となく悲しそうに見えた
「ごめんね、仕事出来なくて」
「楓」
「うん」
「貴方は嘘は嫌いでしたね」
「そうだね」
「では、僕も隠さず伝えますが・・・・・」
「うん」
繭の困った表情をはじめて見た
どうしたんだろう
「先ほど、僕の知り合いのドクターにここで診察をしていただきました」
「うん」
「詳しい検査が必要なようです」
「検査?」
「はい、申し訳ありませんが動けますか?」
「動けるけど・・・・・」
「僕は楓を信じています、この言葉の意味はわかりますね?」
「逃げないよ、逃げても意味が無い」
「そうですか、では着替えてへリポートへ」
「どこまで行くの?」
「検査の出来る病院までヘリで移動します」
「わかった」
ここがどこかは教えてくれないんだ
久しぶりに、普通の服を着て鏡を見つめた
何だか変な感じ
「行きましょう」
「うん」
また繭の後ろを歩き、屋上へ向かった
ここに来るのは2回目かな
一度目はここへ来た時
そして今日
「規則ですので目隠しを」
「わかった」
大人しく目隠しをされたまま、うるさいエンジン音だけを聞いていた
景色が見えないから時間も長く感じる
そして病院のヘリポートで目隠しを外され、久しぶりに街の景色を見た
ここは・・・・日本じゃないのかな
見た事がない景色だし、余り寒くない
「体調は?」
「大丈夫」
「では、行きましょう」
「うん」
綺麗な建物の中を歩きながら考えた
繭が来なければ、きっと病院すら連れて来てもらえなかっただろうな
今でも極寒の中で仕事をして、頭が痛くても無視されて無理矢理作業をさせられていたかも知れない
そんな事を考えながら、建物の中に書かれていた文字を見つめた
・・・・・・・・・・・・読めない
やはり日本じゃなさそうだけど、大きな病院だった
そのまま色々な検査をした
機材も何をするものか知っている
一応、製薬関係だしね
面倒臭かったのはMRIの検査
検査自体はそうでもないけど、ピアスを外すのに時間が掛かった
「もうありませんね?」
「うん」
「金属は危険ですので」
「全部外した」
「わかりました」
何だか顔が軽い
ピアスを外すと不安になる
どうしてかな・・・?
そして検査が終わり、繭にコーヒーを買ってもらった
「どうぞ」
「ありがとう」
「今日中に結果が出ます」
「すごいね」
「特別です」
「さすが」
少し苦いコーヒーを飲みながら、ぼんやり歩く人達を眺めていた
この人達は、俺達が刑務所から来た事なんて知らないんだろうな
でも、何だか懐かしい
ずっと薄暗い刑務所にいると、外の世界が明るく見える
もっと早く気付いていれば違う人生を歩んでいたのだろうか?
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