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眠れる訳が無い
どうして楓はこんな場所に戻りたいと言ったのだろう
あのまま入院だって出来たはずなのにどうして・・・
ベッドから起き上がり、曇った窓をそっと手で拭った
こんな最果ての暗い極寒の場所なんかに・・・・・
衛生状態は徐々に改善されているが、全て改善する事は出来ない
楓にはこんな場所で死んで欲しくは無いのに
「・・・・・?」
そんな事をぼんやり考えていたら、何かが頬に落ちて来た
指で拭うとそれは血だった
「何故?」
天井を見上げると、赤い染みのような物から落ちている
この上は確か図書室
でも、この赤い液体は間違いなく血
だけどおかしい
悲鳴も聞こえてこなかったし、誰も騒いでいない
もしや・・・自殺?
どちらにせよ、確認しなければ
こんな時に厄介な事だけは起きて欲しくなかったのに
溜息をつきながら部屋を出て、階段を上り図書室に向かった
ドアの前に立ち、一応拳銃の中の弾を確認した
ここに来る時に読んだ書類に書かれてあった事を思い出しながらね
もし何かあれば、僕はここの囚人を撃ち殺す許可が下りていた
もちろん罪には問われない
だけど、そんな規則に頼るのも嫌だった
ドアノブを握りしめ、静かにドアを開けた
中は暗い
でも・・・・・人の気配はある
そのまま壁を探り、明かりをつけた
「・・・・・・・・・・・・・え?」
「意外と遅かったね」
何が・・・・起きた?
床に倒れているのは・・・・まさか・・・・まさか!
「楓っ!楓!!」
血だらけの楓を抱きしめながら、何度も名前を呼んだ
もう呼吸していない事もわかっていたけど、こんな別れ方は嫌だっ!
「・・・・・・・・・・・お前達が殺したのですか?」
「まさか」
「私達が殺す理由など無いでしょ?」
「では、何故ここに?」
「嫌だな・・・・それぐらいわかってよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
そう言って微笑む翔
目の前に死体があるのに何故笑える?
「貴方達がここへ来た時にはもう死んでいたと?」
「そうだねー」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
こいつらは何もしていない
悔しいけど僕の勘がそう言っていた
「楓・・・・・・・・・・・どうして・・・・・」
もしかして死ぬ為に戻って来たの?
でも、そんな事を考えていたのならすぐに気付けるはず
「楓っーーーー!!」
何かが音を立てて切れた
感情が抑えられない
「目を開けて・・・・お願い・・・・・楓っ!!」
「・・・・・・・・・・・・無理だよ」
「黙れ!」
「楓はもう目を覚まさない・・・・・諦めたら?」
「嫌だ!!楓・・・・楓っ!!」
楓が生き返るのなら僕は何でもする
何でも・・・・・・
だからお願い・・・・・・・楓・・・・・・
「ひとついいかな?」
「・・・・・・・・・・・・・何?」
「お前は楓を生き返らせたいの?」
「当たり前だ!」
「おかしいなー」
また笑っている
ムカつく
「何を笑っている」
「じゃ尋ねるけどさ・・・・お前は何をしにここへ来たの?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
何をしに・・・・・・・
それは・・・・それは・・・・・・
でもっ・・・・・・・
「人間なんて所詮そんなものだよね・・・・・他人の悲しみはわからない、でも自分の悲しみには必死になる」
「楓は・・・・特別なんだ」
「お前にとって特別でも俺には関係ないね」
「・・っ!」
関係ない
確かにそう
僕だけの特別であって、彼らにとっては関係ない事
だから笑えるんだ
「じゃさ・・・取り引きしない?」
「・・・・・・・・・・・取り引き?」
「お前は楓を助けたいんだろ?」
「でも・・・・楓はもう」
「助けてあげるよ・・・・・・サービスで病気もついでにね」
「えっ?」
「もうわかっているんだろ?あの薬の出所」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・やはりお前が?」
「そうだよ、どうするの?俺を殺す?それとも自分の目的を忘れる?」
僕は・・・・・・
僕は・・・・・・・・・・
「殺す為にここまで来たんだろ?そして殺したい相手は目の前に居る」
僕の目的は・・・・・目的・・・・・・・・
「でも、俺を殺せば楓は目を覚まさないけどね」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
こいつを殺したら・・・・・楓は冷たいまま
でも僕が感情の全てを閉じ込めてしまえば楓は目を覚ます
「どうするの?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
本当に人間なんて脆くて弱い
そして自分の事しか考えられない動物
笑えるね・・・・僕も人間だった事を今思い出したなんて
そう、自分の目的を楓の為に忘れようとしている弱い人間
「・・・・・・・・・・・・・楓を・・・・・助けて下さい」
「これからは大人しくしているって事?」
「はい」
「クスッ」
悔しいけど楓は消したくない
「商談成立だね」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「じゃ、出て行け」
「えっ?」
「約束は守る・・・もちろんお前も守れよ」
「はい」
本当に生き返るのだろうか?
僕は騙されているのだろうか?
でもそれでもいい
もし楓が生き返らなければこいつらを殺すまで
「おやすみー」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
でも、今は信じたい
それだけだった
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