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本当に翔は綺麗だ
どんな仕草でも可愛いと思えてしまう
「翔」
「何?」
「俺の事を好きになってくれる?」
「無理かもね」
「・・・・・・・・・・そう」
「そんな感情なんて必要ないだろ?」
「なのかな」
「お互い満足できればそれでいいんじゃない?」
「じゃ、俺じゃなくてもいいって事?」
「楓の顔は好きだよ・・・あとこの綺麗な指もね」
心は必要ないんだ
わかっていたけど・・・・・ね
「もうお喋りはいいだろ?」
「そうだね・・・・・もういいよ」
きっとこれが最後のキスになるんだね
「翔・・・・・」
「んっっ・・・っ」
俺が最後に求めた返事は返っては来なかった
残念だけど仕方がない
求めても仕方がない
「楓・・・・・脱いで」
「うん」
舌を絡めながらボタンを外すフリをして、繭から受け取ったナイフをそっと取り出した
「翔・・・・・・」
「早く・・・・楓」
「・・・・・・・・・・・バイバイ」
「えっ・・・・・ぐっ!!」
翔の胸に突き刺したナイフを握りしめ、更に深く突き刺した
そして和海が冷静に言った
「そんな事をしたところで翔は・・・・・えっ?」
「死なない体と死ねない体の意味ぐらいわかるよ」
そう
俺が選んだ決断は翔を消す事
もちろん好きだったよ
でもね・・・・・俺はペットじゃないから
「・・・・・楓・・・おま・・・え」
「このナイフには俺の血が塗りつけてあるんだよ」
「何故・・・・それ・・・・を」
「翔は殺しても死なないと言ったよね・・・確かに普通に刺し殺してもまた傷を再生してしまう力があるから死なない・・・・でも、不思議な事に翔の力で生き返った奴の血は翔にとって猛毒になる」
「・・・・・・・・・・ゲホッ・・・ああ」
「だから翔は仲間を簡単に作らなかった・・・俺も病気は想定外の事で困っていたんだけど逆によかったかもね」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
だから繭が俺に言った言葉に全てを託す事にした
翔なら俺を生き返らせてくれると言った言葉をね
その為には翔の信用が必要だった
どうせ治らない病気なら、そのまま死んでもいいと思ったから出来た事
そして繭の予感は的中した
俺の血は翔にとって猛毒になった
でも、その事を知っているのは少なく限られた人間だけだった
漸くその事実を掴んだ繭は、ここへ来た初日俺にその話をした
半信半疑だったけど、確かに翔は普通の人間とは違うという事が漸く繋がったんだ
最初はその話を聞いて迷ったのも事実
これは俺にしか出来ない事だったから
でも、翔を好きだったのも事実
好きな人を殺せるだろうか?
正直、仕事なんてどうでもよかった
でもね・・・・俺は知ってしまったから
「ねぇ、翔・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「本当はもう死にたかったんでしょ?だから俺を誘ったんじゃないの?」
「・・・・・・・・・・・・さぁ・・・・な」
俺に抱かれながらいつも言っていた言葉
(ああっ・・・・楓っ・・・殺して・・・・俺を)
最初は殺しての言葉の意味を取り違えていたけど、本当の意味はもう静かに眠らせて・・・だったんでしょ?
ここは確かに翔にとっての天国かも知れないけど、永遠に近い命を生き続けるには辛い場所だものね
「おやすみ、翔」
完全に呼吸が止まったのを確認して和海を見つめた
「どうする?俺を殺す?」
「いえ・・・・私は貴方のように強くはありませんので」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そう」
俺は、翔を刺したナイフで腕を切り、流れ落ちてきた血をナイフで拭い取って和海の足元に投げた
「楓」
「何」
「永遠の時間はとても辛いですよ・・・・本当に本当に・・・・孤独で辛い」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
自らの首を切り、そのまま翔の上に倒れこむようにして死んだ和海
「でもね、和海・・・・・天国か地獄かは知らないけどそこも時間は無限だと思うけど」
本当にそんな場所が存在すればの話だけどね
「本当にさようなら・・・・・」
繭に言われた通り、二人に火をつけて扉を閉めた
そのうち床が崩れ落ち、全てに火が回るだろう
「楓ーーっ!早く早くっ!!」
ヘリポートのヘリから手を振っていたのは燕羽だった
そう・・・・
燕羽が翔に殺される前に殺すふりをした
勿論、氷龍も知っていた
「揃いましたね」
「オッケー!」
「繭、いいの?みんな死んでしまうかもよ?」
「ここに居るのは死んでもいい人間でしょ?氷龍は死ぬほどの辛さを味わったと言う事で釈放です・・・・・それにこんな場所は存在してはいけないと思いましたので」
「そうかもね」
「ここ数十年、この場所は凶悪犯が自由になれる場所になっていたと聞いていますし」
「そうなんだ」
「ねね、これからどうするの?」
「どうしようか」
「決まっていないなら暖かい場所に行きたいっ!そこでこれからの事を決めようよ」
「それもいいね」
「賛成だ」
「僕もです」
繭は仕事を辞めた
でも、しっかり前の所長が貯め込んでいたお金を全て取り上げてきたらしい
氷龍もお金持ちだった
そりゃね・・・・あそこで商売していたんだし貯まって当たり前か
燕羽と俺は刑務所で死んだ事になってしまうんだろうけどね
「俺の死んだフリどうだった?」
「上手だった」
「ふふーん」
「お前、俺が抱き上げて歩いている時くしゃみしそうになっただろ」
「あはっ、ばれた?」
「もしそれで気付かれたらお前を本気で殺すところだったよ」
「またまたぁ~~!氷龍はそんな事しないもんね~」
仲がいいね
気が合うのかな・・・?
そんな二人から視線を外し、綺麗な星空を見つめた
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「楓」
「うん」
「後悔しているのですか?」
「後悔・・・・どうかな、よくわからない」
「そうですか」
「これからの時間をどうやって過ごそうかと考えていただけ・・・・みんなが死んでも俺だけはこのまま生き続けるんだろうしね」
「こんな事を言うのは今更ですが・・・・僕は楓を失いたくなかった・・・・でも、それは僕の我儘でしかありませんね・・・・・」
「いいんだよ」
「でも、僕はずっと楓の傍にいますよ」
「えっ?」
「その血を僕に分けて下さいね」
「・・・・・・・繭」
「同じ苦痛を共に生きて行きます」
「いいの?」
「勿論です」
「ありがとう」
でも、今はまだこのままでいい
これからの人生、みんなで楽しく過せたらいい
俺にとっては短い刻かも知れないけど思い出は残せるしね
ー完結ー
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