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消したい家族
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タクシーの窓から、見えない星を探していた
この空の下には、たくさんの人間が息をしている
そして家族がある
家族ね・・・・何だっけ、それ
俺にも一応上辺だけの家族がいる
仕事と愛人にしか興味がない父親と言う名の男と、金と若い男にしか興味が無い母親と言う名の女
ちなみにこの女は3年前に突然現れて母親だと名乗った
父親と言う男は、その女が妻になると一気に興味を無くして新しい愛人を捜した
愛人って、漢字で書くと愛する人みたいに見えるけど、実際は金さえあれば簡単に足を開く女だって言う意味だと知った
実際、父親と言う男には時間も金もあった
その金目当ての女がたくさん寄って来る
ホントに馬鹿みたい
それで満足している男がね
俺の母親は俺が10歳の時に父親に追い出される形で一方的に離婚された
浮気なんか出来ない母親に弟が似ていないというくだらない理由で勝手に浮気と決めつけた最低野郎だ
だから弟も連れて出て行った
そして3年前、病気でこの世を去ったと聞いた
ホント・・・・一度は愛した人が死んだ半年後に再婚するんだから笑うしかないよね
俺が知っている母親は優しくて、毎日泣いていたっけ
あんな男のどこがよかったのか知りたいぐらいだ
弟は今どこにいるのかすらわからない
会いたくて何度か捜そうとしたけど、見つからなかったんだっけ
だから今の俺の家族は、その弟と・・・・・・・・
「翔」
「おばーちゃん、寒かったでしょ?」
「いいんだよ、翔の顔が見たかっただけだから」
「入って」
「気を使わなくてもいいんだよ、そうそうお土産」
「えっ?」
そう言ってりんごがたくさん入った袋を差し出した
「りんご・・・・・」
「翔はりんごが好きだっただろ?」
「うん、ありがとう」
この人は母親の母親
ようするにおばーちゃん
母親が会いに来れない代わりに、おばーちゃんはたまに顔を見に来てくれていた
いつも俺の大好きなりんごを持って・・・・・
どうして寒い玄関先に居るのかなんてすぐにわかる
あの女が今日も家に入れてあげないからだ
なかなか帰らないおばーちゃんにイラついて俺に電話をかけて来たらしい
「行こう」
「えっ?」
「この時間はもう電車ないし、一緒にどこかに泊まろうよ」
「でも、学校が」
「明日は土曜日だよ?」
「おや、そうだったね」
「お金なら心配しなくてもいいよ、お年玉があるしおばーちゃんの誕生日に何もプレゼント出来なかったからこれがプレゼントね」
「翔・・・・・」
「疲れたでしょ?手もこんなに冷たくなってる」
シワシワの手
俺は大好きだ
だってとても温かいから
「大丈夫だよ」
「行こう」
「ああ」
おばーちゃんは田舎で一人暮らしをしていた
毎日畑仕事をしながら内職で着物を作って生活している
母親は父親の会社の食堂で働いていた
そしてその母親に目をつけたのが父親
もともと裕福な家庭で育った人間ではなかったけど、顔立ちがとても綺麗な人だったからだろう
俺の顔は母親似だけど、弟は母親には余り似ていなかった
でも、可愛い弟だった
おばーちゃんは、都会に出てくるお金を少しずつ貯めて俺に会いに来てくれていた
あの女のせいで家には入れず、いつも顔だけ見てお土産のりんごを渡して帰るだけ
それだけの為に、毎日お金を貯めていた
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