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変な奴
それが最初の印象だった
そして今日はお節介も付け加えられた
「適当に座って」
「うん」
家は2DKのマンション
部屋は綺麗に片付けられていた
料理の本がたくさんある・・・と言うかほとんど本
「お腹空いてるだろ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「ちゃんと食べないとな、今作るから先にお風呂に入れ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「入りなさい!バスタオルと着替えは後で持って行くから」
「うん」
何だか嬉しい
何でだろう
「ちゃんと温まれよ」
「うん」
「バスルームは玄関の右な」
「わかった」
家と違ってここは暖かい
玄関に置かれた小さな花
綺麗なバスルームと綺麗な鏡
バスマットは可愛いひよこ柄
何となく心が癒される
家とは大違いだ
俺の家は広いだけの空き箱
温もりはどこにもない
あの女の趣味が悪過ぎて吐き気がする空き箱
だらしないあいつはいつもバスルームに髪の毛を落として行く
鏡は水が跳ねたまま拭きもしない
バスマットも汚れたら買い替えるから水を全く吸い取らない
家の掃除は全てハウスクリーニングまかせ
たまに食事を作るみたいだけど、キッチンはそのまま放置状態
やめよう
今更考えても仕方が無い
バスルームのドアを開けて、中に入り久しぶりにのんびり体を洗った
「アヒル?」
一人で遊んでるのかな?
可愛いけど・・・・・・
アヒルを浮かべ、つい遊んでしまった
「翔、いいか?」
「何?」
慌ててアヒルを取り出して背中を向けた
「これを入れようと思って」
「りんごの皮?」
「いい香りだろ?」
「うん」
「でも、食べるなよ?」
「わかった」
「じゃ、肩までつかるんだぞ」
「うん」
りんごの皮・・・・・
すごくいい香り
湯船に浮かんでいる皮を手に取り、そっと顔に近付けた
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
おばーちゃん、どうしてるかな
風邪とかひいていないかな
雪が降って雪かきで腰とか痛めなければいいけど
卒業まで後数ヶ月
あいつの会社に就職して会社を全て乗っ取ってやる
それが仕返し
俺と弟を引き裂いた仕返しだ
「・・・・・・・・・・・・いい匂い」
今度は違う匂いが漂っていた
何だろう、美味しそうな匂い
お風呂から出ると、綺麗なバスタオルと少し大きめのスエットが置かれていた
下着は新しいけど・・・・・やはりひよこ柄
鳥が好きなのかな?
「もうすぐ出来るからな」
「ひよこ好きなの?」
「大好き!でもその下着は誕生日に貰ったものだけどさすがにね・・・よかったよ、使う日が出来て」
「そうなんだ」
「少し大きいな」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
そう言って袖を折り曲げてくれた
スエットにも何気にひよこがいた
「よし、出来たぞ」
「うん」
「今夜はグラタンとポテトサラダだ」
「美味しそう」
「よかった」
だからしゃがいもがあったんだ
納得
「熱いから気をつけろよ」
「うん、いただきます」
「どうぞ」
熱々のグラタンはとても美味しかった
久しぶりに温かい物を食べた
「あっち!」
「大丈夫か?」
「うん」
チーズが想像以上に伸びて驚いた
コックと言うのは本当らしい
だってすごく美味しかったから
この人はいい人かも
そんな気がした
だって、料理がすごく優しい味だもの
「翔は何が好きなんだ?」
「特に無い」
「そうか、じゃ嫌いな物は?」
「ニンジン」
「子供だな~」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「冗談だよ」
こいつってこんな顔をしていたんだ
今、初めて顔を見たような気がする
「セットが大変そうだね」
「そうでもないぞ?」
「触ると痛そう」
「俺、髪を下ろすと童顔になるからさ」
「へぇ」
「翔は地毛?」
「うん」
「綺麗な髪だな」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「ん?」
「遺伝みたい・・・母親も日本人だけど色素が薄かった」
「そうか」
だからよく先生に呼び出されたと言っていた
俺もそうだったしね
そんな事を考えながらグラスの水を飲んで驚いた
「美味しいだろ?」
「これ・・・・りんごの味がする」
「りんご酢なんだ」
「酢?」
「でも、酸っぱくないだろ?」
「うん」
「自家製だしな」
「そうなの?」
「いろいろ使うから大量に作ってあるんだよ」
「へぇ」
すごく健康的な感じ
口の中がさっぱりするし美味しい
その後も色々な話をしてくれた
ほとんど料理の話だけど楽しかった
「あっ、もうこんな時間・・・送るよ」
そっか
何で時間なんてあるんだろう
「翔?」
「・・・・・・・・・・じゃ、さっきの場所で」
「おいおい」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
帰りたくないから仕方が無い
ここにいても迷惑だろうし
「今夜は泊まって行くか?」
「えっ?」
「そう言えばタルトも食べてないだろ?」
「いいの?」
「翔がよければ大歓迎だ」
「・・・・・・・・・・・うん」
「じゃ、のんびりしよう」
「うん」
「タルトは明日でいいか?」
「うん」
「わかった」
この部屋は居心地がいい
すごく癒される
その後も、海外の話をたくさん話してくれた
「もうこんな時間か」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
こんな時間って・・・・まだ11時
いつもの俺なら喧嘩をしている時間
「寝る前にミルク飲むか?」
「うん」
「じゃ、待ってろ」
ミルクって・・・・
子供みたい
「はい、どうぞ」
「ありがとう」
ホットミルクなんて何年振りかな
一口飲むと、甘い味が広がった
「りんごの蜂蜜入りだ」
「美味しい」
「だろ?」
「うん」
微かに香るりんごの香り
すごく不思議
でも、りんごのおかげで素直になれた
心も落ち着いている
「じゃ、お風呂に入ってくるから先に寝てろ」
「うん」
「あっ、ベッドはダブルだけど布団でいいか?」
「一緒でいいよ」
「いいのか?」
「うん」
「じゃ、右の部屋が寝室だから」
「わかった」
ミルクを飲み終え、カップを洗って寝室に向かった
落ち着いた部屋
どちらかと言えば和風
シーツは綺麗だしいい香りがした
ベッドに入ってみたけど、まだ眠くない
部屋の中を見渡し、壁に貼られていたポスターを見つめた
どこだろう
白い建物と青い海
いい所だな・・・・・・
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