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一人
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楓の家を出て、僕は仕事を探した
でも、この年齢ではどこも雇ってはくれなかった
正社員が無理ならバイトでもいい
今は仕事をしなければ生きていけないんだ
だから僕は履歴書に嘘を書き込んだ
年齢を誤魔化すしか無かったから
そして漸く空港で掃除をする仕事を見つけた
そこで知り合った人に誘われて、住む家も見つかった
狭い部屋に5人いるウサギ小屋のような場所だった
でも家賃は格安だから文句は言えない
頑張ればいつかは幸せになれると信じて頑張って仕事をした
仕事は思ってた以上にきつかった
最初は手にまめも出来たし、足も痛かった
だけど、ほとんど一人だったから気持ち的には楽だった
でも、友達は作るつもりはない
今はお金を貯める事が先決だと思った
会話もほとんどしなかった
周りからは陰気な子だと言われていたけど気にするつもりはなかった
そして半年後、唯一の知り合いが主任と喧嘩して辞めてしまった
彼は仕事が見つかったら必ず返すからお金を貸して欲しいと頼んで来た
僕はお世話になったので彼を信じて今まで貯めていたお金を貸した
なのに、突然アパート逃げるようにして消えてしまった
別に悲しくはない
信じた僕が馬鹿だったんだ
そしてますます人間不信に陥った
いつも俯きながら仕事をして、アパートに帰る毎日が続いた
寒い夜でも暖房器具はない
ひたすら耐えるしかなかった
寒さで震えながら耐えていたそんなある日・・・・・・・
「この曲最高だな」
「いいね~、誰?」
「ほら、前にバンドで活動していた楓だよ・・・・海外でソロデビューしたらしいぞ」
「まじで?すげーな!!」
えっ・・・・
楓・・・・・・・・なの?
そっか
よかった
楓は成功したんだね
ホントによかった
でも、これで二度と手の届かない人になってしまったんだね
薄い布団の中で楓の曲を聴きながら泣いた
これでよかったんだ
だから悲しんではいけないのに・・・・・どうして涙が零れるんだろう
それから楓の曲は色々なところで流れるようになっていた
僕は、その度に辛くて悲しかった
「繭、顔色が悪いな」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「相変わらず無口な奴だな!」
昨日から体の具合が悪い
すごく寒いし、だるくてふらつく
でも、仕事は休めない
休んだからクビになるから
だから仕事を休まずにふらつきながら仕事を始めた
体がふわふわする
そして目の前が真っ暗になった
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
目が覚めたのは主任の部屋だった
いたわりの言葉も無く言われた言葉は・・・・・・
「お前クビな」
「えっ?」
「空港のど真ん中で倒れる奴があるか!」
「ごめんなさい、もう二度とそんな事がないように・・・・」
「クビ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「給料は振り込んでおくから」
「・・・・・・・・・・・・・・お世話になりました」
そして仕事を失った
ふらつく体でアパートへ戻り、荷物を持って部屋を出た
これからどうしよう
でも今は体を休めたい
ポケットの中には2千円と小銭が少し
そのままネカフェに向かい、眠る事にした
給料日は明後日
それまでの辛抱だ
今は体調を整えて、また仕事を探そう
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