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時間になり、ネカフェを出た
体はまだだるい
僕は本当に死んでしまうかも知れない
ふらつきながら駅に向かい、ベンチに腰掛けた
すごく寒い
荷物を持っている僕は家出したみたい
溜息をつきながら、ふと目の前のビルを見上げた
「・・・・・・・・・・・・・あっ」
りんごだ
屋上にりんごの絵が描かれていた
懐かしいな・・・・・・・
子供の時に食べたりんご・・・・美味しかったな
もう食べる事もないんだろうな
どうして僕だけがこんな目に遭うんだろう
でも、世の中にはもっと辛い思いをしている人もいるんだろうな
「疲れた・・・・・」
荷物にもたれかかり、目を閉じた
出来ればこのまま死んでしまいたい
あっ・・・・楓の曲だ
会いたいな・・・・・・もう一度楓に・・・・会いたい
「翔、雪が降りそうだから明日にしないか?」
「ダメ、何となくそんな気がする」
「じゃ、マフラー」
そう言ってマフラーを首に巻いてくれた
「ありがとう」
「ああ」
人混みに流されながら、駅に向かった
よくわからないけど、無性にあのりんごが見たくなった
いつも悲しい時はあの場所から赤いりんごを見つめていた
それだけで少し元気になれたから
「翔、大丈夫か?」
「うん」
そして見慣れたベンチまでやって来た
「先客だな」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「翔?」
「繭だ」
「えっ?」
「繭っ!!」
嘘みたいだ
ずっと捜していた繭がベンチで眠っていた
「繭?」
「様子がおかしいな」
「えっ?」
そう言って額に手を当てて幻月が言った
「すごい熱だ、とにかく病院へ」
「うん」
そのまま繭を抱き上げて、病院に向かった
繭は過労と栄養失調と風邪で肺炎を起こしかけていた
そしてすぐに入院する事になった
「翔、俺は入院の手続きと着るものを用意してくるから」
「うん・・・・ありがとう」
「お前は傍に」
「わかった」
苦しそうな繭の顔を見つめ、そっと手を握りしめた
こんなに苦労していたなんて・・・・・・
ごめんね・・・・・・
昔の面影が残る顔
仲良く遊んでいたあの日
でも、これからはずっと一緒だよ
もうすぐ俺の誕生日
それまでの辛抱だ
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