アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
-
暗い顔をした翔が俯いていた
「繭は?」
「ムースを食べてくれたよ」
「えっ・・・」
「ホントは素直でいい子みたいだな」
「うん」
「でも、どうやら誤解をしているみたいだ」
「誤解?」
「ああ、だからちゃんと話をして誤解を解いた方がいいな」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「話すのが怖いか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・どうかな・・・・嫌われるのが怖い」
「でも、このままではずっとあの調子だぞ」
「うん」
「どうするかは翔が決めろ」
「そうだね・・・少し考えさせて」
「わかった」
「少し風にあたってくる・・・繭をお願い」
「ああ」
「屋上にいるから」
そう言いながら立ち上がり、廊下を歩き出した
確かに言いたくないよな
父親にあんな事をされていたなんて・・・・
繭にとっての父親でもあるわけだし
ん~~~
でも、このままでは誤解したまま会話も出来ない兄弟になってしまう
だけど、俺が口出しをする問題ではないしな
「あっ、そうだ!」
この病院はTVはレンタルだったんだ
今時珍しいけど、何もない部屋じゃ退屈だろうし今のうちにレンタルして来るか
しかし、売店で手続きとかわかるわけがない
漸く売店を探し、TVのレンタル手続きをした
すぐに持って来てくれるらしいから急いで戻ろう
病室に戻ると、繭は相変わらず背中を向けていた
「何か食べたい物とかないか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「そうそう、退屈だと思ってTVレンタルしておいたから」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
はぁ・・・・
まるで野良猫だ
言い方が悪いけど、全くなついていないネコみたいだし
そんな事を考えていると、TVが運ばれて来た
しかし・・・・・今時レンタルね・・・・
マジでビックリだ
「TV観るか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
仕方ないので一応TVを付けてみる事にした
「何かやってるかな」
適当にリモコンをいじりながら溜息をついた
「あっ、俺彼の曲好きなんだよな~」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
あれ?
今、体が動いた?
「へぇ、この曲は彼が歌っていたんだ・・・・イケメンだな」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「うるさいか、ごめん消すよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・そのままで」
「ん?」
「そのままで」
「わかった、じゃこっち向いて観ろ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
振り向いた
でも、様子が何となくおかしいような
「へぇ、ソロデビューする前はバンド組んでたんだな・・・・俺そういう事には疎いからさ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「でも、いい曲だよな・・・・・何だろう、胸が苦しくなるようなラブソングだ」
繭は無表情でTVを見つめていた
でも・・・・・
「えっ?」
泣いてる?
まばたきもせずに涙を・・・・・・
「繭君?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「何か飲み物を買ってくるよ」
そのまま部屋を出て、そっとドアに耳を近付けた
「楓っ・・・・・会いたい・・・・・でも・・・・・ううっ・・・・」
えっ?
もしかして知り合い?
いや、単なる知り合いなら泣いたりはしないはず
もしかしたら・・・・・・・・
「う~ん」
でも、確信は無いしもうしばらく様子を見てみるか
翔も気になるし、屋上へ行ってみよう
空は夕暮れ色
悲しくなるような茜色
「はぁ・・・・・・・」
誤解か・・・・・・
だからあんな態度だったんだ
繭にしてみれば、俺だけ幸せだと思っているんだろうな
幸せ・・・ね
どうしよう
でも、このままでは嫌だ
誤解されたままではまたどこかへ消えてしまいそうで怖かった
俺が全て話したら、繭も今までの事を話してくれるだろうか?
いや、繭の事は聞かなくてもいい
辛い思い出なら尚更だ
でも、俺はちゃんと話すべきかも知れない
「だけど、もう少し時間が欲しい」
溜息をついて、俯いた
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
39 / 307