アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
-
翔を迎えに行こうとしたら丁度戻って来た
まだ悩んでいるみたいだ
「翔」
「・・・・・・・・・・うん」
「一応、俺の考えを伝えておくよ」
「考え?」
「そうだ」
「うん」
「繭が退院したら、一緒に暮らすって言うのはどうかなって」
「えっ?」
「高校に行きたかったら行けばいいし、それぐらいの蓄えならあるしな」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「もう一人にするのはいけないと思うんだ」
「うん」
「退院は多分来週になるから、それまでに少しでも距離が縮まればいいと思っている」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「そろそろ食事か・・・・・用意してやらなきゃ」
「・・・・・・・・・・・・俺が」
「そうか?じゃ頼んだ」
「うん」
これでまた出て行けと言われたらショックだろうけど、ずっと廊下にいるのもね
「そうそう、俺は買い物に行って来るから」
「わかった」
「すぐに戻るよ」
「うん」
翔を残し、そのまま家に向かった
「ん~、引っ越したほうがいいかな」
さすがにここでは狭いよな
翔も繭も部屋が欲しいだろうし、遠慮しながら生活しても楽しくはない
「そう言えば・・・・上の階の部屋まだ空いてるかな?」
確か上は3LDKだったはず
上なら引越しも楽だし、一度尋ねてみるか
みんなで笑顔で暮らしたいよな・・・・・・
大丈夫、きっと笑顔で暮らせる日が来るはずだ
食事を持って、声をかけた
「繭、食事だけど」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「入るね」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ダメだとは言われていない
だから入る事にした
「お粥だけど、食べられそう?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
でも、無視か・・・・・
仕方ないけどね
「スプーンがいるね」
「・・・・・・・・・・・・・・・・食べ物に困った事なんか無いんでしょうね」
「・・・・・・・・・・・・・あるよ」
「嘘だ」
「俺は、繭が羨ましかった・・・・・ママと一緒にいられる繭が」
「誰ですか?そんな人は知りません」
「繭」
「貴方があの人にどんな感情を抱いているのかは知りませんが、幸せだと思った事など一度も無かった」
「・・・・・・・・・・・・それって」
「思ったんですよ・・・・僕はやはり浮気で出来た子供なんじゃないかとね」
「そんな事は無い!」
「だって、顔も全然違うじゃないですか・・・・・それに、あの人は大人しそうに見えて外では・・・・」
「えっ?」
「ようするに、子供より男を選ぶような女です」
「ママが?」
「イライラしますね・・・・いい年をしてママとか馬鹿じゃないですか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「本当にイライラする」
「繭、もう全て話そうよ・・・・・俺達は兄弟なんだし、このままではいけないと思う」
「いいですよ、僕が今までどんな目に遭って来たか・・・・話しますよ」
「うん」
そして繭は驚くような事実を話してくれた
そこには俺の知っている優しくて健気なママはそこにはいなかった
でも、事実なんだろう・・・・・
「驚きましたか?どうせ貴方にはわかりませんよね」
「・・・・・・・・・・・・・・わかるよ」
「よく言う」
「じゃ・・・・・・・・・・・俺の話をするから」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
俺は、繭を引き取った男が許せない
必ずお礼はさせてもらう
でも、その前に俺の事も知ってもらわなければいけないと思った
もう考えている時間は無い
今がそのチャンスなんだと思った
だから、繭と離ればなれになってから今まで俺がされて来た話を隠さずに話した
全てね
「・・・・・・・・・・・・・・汚い兄でごめんね」
「・・・・・・・・・・・そんな」
「本当だよ、あいつは父親なんかじゃない・・・・・本当は今すぐ殺してやりたい」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「繭も苦労したんだね・・・・・・よく頑張った」
「翔は・・・・・ずっと幸せではなかった・・・・?」
「そうだね、あいつが再婚して俺はほとんど家には帰らなかったし・・・でも、おばーちゃんにはたまに会っていたんだ」
「おばあちゃん」
「覚えてるだろ?」
「うん」
「あの女、家に入れもしないで・・・・・」
「親の身勝手で僕達は引き裂かれしまったのですね」
「そうだよ、繭から話を聞かなければずっと優しいママのままだった」
「僕も、厳格な父のままでした」
「でも、裏を返せば・・・・・・」
「最低の親です」
「だな」
「・・・・・・・・・・・・・・・・翔」
「うん」
「ごめんなさい」
「繭」
「誤解していました・・・・僕だけが不幸だと・・・心のどこかではずっと会いたいと思っていたのに」
「いいんだよ」
「でも・・・・翔は・・・・・」
「同じ事を繰り返さない為に俺は家を出たんだ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「今度会う時は、あいつらの泣き顔を見る時かな」
「僕・・・・これからどうすれば?」
「お前は一緒に暮らすんだ・・・・そしておばーちゃんもね」
「一緒に?」
「ああ、そこからが新しい人生の始まり」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「あいつの家も全て奪ってやる・・・・そこでみんなで暮らそう」
「僕、りんごの木を植えたい」
「一緒に植えよう」
「うん」
子供の頃、毎日りんごが食べたくて繭が庭にりんごの木を植えたいと言った事があったっけ
子供だったから、その時は無理だったけど今ならその夢が実現できそうだ
「また俺達、昔のように仲良く出来るかな?」
「うん」
「よかった」
内心ドキドキしながら繭の顔を見つめた
でも、繭は笑っていた
「あっ!ご飯」
「お腹すいた」
「わかった、じゃ食べさせてあげるから」
「うん」
少し冷めたお粥を食べさせながら、いろいろな話をした
でも何だろう
時折見せる表情は悲しそうで・・・・・・・
その表情の意味を話してくれるだろうか?
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
40 / 307