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家に帰るのは久しぶり
楽しい思い出なんて何一つ無い
あるとするなら繭との思い出ぐらいだね
車の中でいろいろな事を思い出していたけど、辛い思い出ばかり
「翔」
「うん」
「家はお前の名義になっているけれど、どうするつもりだ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「辛い思い出しか無いのなら、処分するか?」
「処分・・・・・」
「決めるのはお前だからそれ以上は何も言わないが」
確かにその方がいいかも知れない
俺にとっても繭にとってもいい思い出なんか何一つ無い
あの部屋を見る度に、俺はあの時の忌まわしい日々を思い出してしまうだろう
「お願いがあるんだけど」
「何だ?」
「家は処分したい」
「わかった」
「どうせ住んでも嫌な事しか思い出さないと思うし」
「そうだな」
「それでね・・・・・」
「ああ」
「処分したお金で冬矢の屋敷の近くに庭付きの家を買いたいんだけど無理かな」
「庭付きか・・・・広さは?」
「一人だから」
「一人?」
「うん、田舎に住んでいるおばーちゃんに住んでもらいたいんだ」
「成程」
「庭が欲しいのは、繭とりんごの木を植える約束をしたから・・・・」
「そうか」
「近くに住んでいれば安心だし、会いにも行けるでしょ?」
「だな」
「おばーちゃんが今住んでいる所は雪がすごく降るところなんだ」
「心配だな」
「うん」
「わかった、早急に探してみよう」
「ありがとう、もしお金が足りなかったら・・・・・う~ん」
「心配するな」
「でも」
「お前にとって大切な人なら俺にとっても同じだろ?」
「冬矢」
「じゃ、さっさと終わらせて家を処分する手続きをしよう」
「うん」
そして見覚えのある門の前までやって来た
「そのまま玄関まで入って」
「わかった」
庭は荒れ放題
木もほとんど枯れていた
冬だからじゃなくて、枯れていた
「家にいるみたい」
「そうか」
あの女の車がある
車だけは綺麗に磨いてるなんて笑える
車から降りて、あの女の車めがけて石を投げつけた
「どうせやるならこれぐらいしないとな」
そう言って冬矢は大きな石を持ち上げ、思い切り投げつけた
俺もレンガを持ち、気が済むまで投げつけた
「廃車だね」
「修理費の方が高そうだしな」
「クスッ」
冬矢の投げた石でボンネットが思い切りへこんで変な水が出ていた
まるでアニメみたいな車に思わず笑ってしまった
「誰かいるの?」
「いるよ」
「その声は・・・・・・」
「面白い物があるから来いよ」
「嫌よ!寒いのに馬鹿じゃないの?」
「まぁいいけど・・・・・馬のエンブレムが折れちゃったね」
「えっ?」
そして慌てて出て来た女を見て呆れた
また高そうなネックレスを買ったのかよ
イラつく
「な、なにこれ・・・・・弁償しなさいよ!」
「何言ってるのか意味がわからないな」
「だから!」
「この車も、屋敷も俺のものだから何をしても構わないだろ?」
「どう言う事よ?警察を呼ぶわよ!」
「どうぞ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「助けを求めても無駄だよ、あいつは今頃取り調べ中かもね」
「えっ?」
「そうそう、俺が前にお前に言った事覚えてる?」
「あんたに何が出来るのよ!」
「何でも出来るよ・・・・・あいつの会社も奪ったしね」
「どう言う事?」
「だからあんたは今、犯罪者の妻って事」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・嘘よ」
「ホントだよ、あいつは家も会社も失った・・・もちろん財産もね」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「慰謝料が欲しいならあいつに言えよ・・・・俺には関係ないしね」
「ふざけないでよ!」
「俺もあんたに付き合うほど暇じゃないんだ・・・・だから手短に終わらせようよ」
「何が言いたいのよ」
「何が言いたいかって?・・・・・そんなの決まってるだろ」
「・・・・・・・・・・・・・・何よ」
「出て行けメスブタ!そして二度と俺の前に現れるな」
「なっ!」
「そうそう、この家にあるものは全て俺の物だから、お前はそのまま出て行けよ」
「いい加減にしなさい!」
「言っただろ?あんたを追い出すって」
「いいわよ、私だって貯金ぐらい・・・」
「無いよ」
「えっ?」
「あいつが隠したお金の事だろうけど・・・・・全て没収したから」
「そ、そんな・・・・・・嘘よ!」
「なら確認すればいい」
青ざめた顔で家の中に入り、携帯で自分の講座預金を確認していた
ホント、馬鹿だね
俺達の家の中に入ると、相変わらず下品なものばかり増えていた
「・・・・・・・・・・・・・・380円って・・・・・どう言う事よ」
「気が済んだら早く消えろ」
「・・・・・・・・・・・・違うの、聞いて!私本当は翔を可愛がりたかったのよ・・・でも、あの人が」
「嘘はいい、お前の本性なんてお見通しだ」
「・・・・・・・・クソガキ!」
もう少し演技を続けるかと思ったけど、やはりこいつは馬鹿だね
だから同情もしない
「今夜は冷えるから風邪引かないように」
「うるさい!」
「家の鍵を置いて早く消えてね」
「一生恨んでやる」
「どうぞ」
「殺してやりたいわ」
「はいはい」
「クソ野郎が!」
「酷いな・・・・・じゃ俺も容赦はしない」
「えっ?」
「その毛皮、お前の物じゃないだろ?あと宝石類もね」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「無一文で出て行けよ・・・・おばさん」
「・・・っ!」
「どこかの寮付きの工場で働けば?まぁ、その歳で雇ってくれるかどうかはわからないけどね」
「悪魔!!」
「ありがとう、最高の言葉だよ」
「くっ・・・・!」
服は着せてあげたんだから感謝して欲しいけどね
そして家は本当の空き箱になった
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「大丈夫か?」
「うん」
「と言うか、お前を敵に回すと泣かされそうだ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「冗談だぞ?」
「わかってる・・・・少しだけ荷物を持って行ってもいい?」
「ああ」
「じゃ、待っててね」
「わかった」
そのまま自分の部屋に行き、着替えとおばーちゃんと撮った写真を持って部屋を出た
「お待たせ」
「もういいのか?」
「うん」
「じゃ、一度戻ろう」
「わかった」
悲しくは無い
でも、多少の思い出はある
俺が育ってきた家だからね
でも、もう振り向かないで前に進もう
そのまま振り向かず車に乗り、門を出た
さようなら・・・・・
二度と戻る事のない温もりのない家
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