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ライバル
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「行くぞ」
「はい」
「はい」
僕達はこんな大会には興味などなかった
でも、迎えの車が遅れていたから客席に移動してだらだらと続いているハイジャンを観ていた
僕達の手には当たり前のように優勝カップや楯
こんなものはどうでもいい
誰が褒めてくれるわけでもないしね
「退屈だね、有無」
「うん」
僕達は兄妹で参加していた
兄の皆無は短距離とハードル
僕は長距離と中距離
全て優勝、それが当たり前の事
「監督、どうしてうちの高校にはハイジャンがないんですか?」
「必要ないからだ」
「そうですか」
陸上部に入ったのも興味があった訳じゃない
この監督に声を掛けられたから入っただけ
それは皆無も同じ
でも、他の高校にはあるハイジャンだけが無かった
でも、そんな事はどうでもいい
「お前達以外の選手は才能が無さすぎだ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
確かにそう
本当ならリレーでも優勝出来たはず
でも、僕達以外の選手はすぐに抜かされてしまうから期待はしていない
そんな事を考えていると、突然歓声が沸きあがった
どうやら終わったらしい
こういう歓声も大嫌い
馬鹿みたい
ホントにそう思う
「ねぇ、見て」
「どうしたの?」
「あの人、選手じゃないよね」
「うん、居なかったね」
「何をするつもりかな」
「さぁ」
身長はそれ程高くない
でも、彼は真っ直ぐバーに向かい勝手に高さを変えていた
「面白い事が起きそう」
「うん」
優勝はもう決まっている
飛び入り参加でも無さそうだし
無言で彼を見つめ、驚いた
「見た?」
「うん」
「すごい跳躍力・・・・高校新だね」
「そうだね」
軽やかにバーを跳び越した彼は、そのまま消えてしまった
会場は当たり前のように言葉を失っていた
「楽しそうだね」
「うん」
バーを飛び越える瞬間はどんな気分なんだろう
一瞬でも鳥になれるのかな
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「どうされました?監督」
「行くぞ」
「はい」
「はい」
そのまま立ち上がり、競技場を出た
監督は早くここから立ち去りたそうに見えた
気のせいだよね?
「あっ、さっきの・・・・・」
「うん」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・翔」
「久しぶりだね・・・・・監督」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
知り合い?
でも、お互い笑っていない
監督って言ったのは確かに聞こえた
「へぇ・・・次の犠牲者は君達か」
「黙れ」
「せいぜい潰されないようにね・・・・・俺みたいにさ」
「あれは事故だ」
「事故ね・・・・・まぁいいや、今はこうして歩く事が出来るんだし・・・でもね」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「恨んでるよ・・・・思い切りね」
「黙れ」
「俺の足はいくらで売ったの?」
「行くぞ」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「勝負しろよ、今度は正々堂々と」
「誰とだ」
「そいつらと」
「何だと」
「逃げるの?今度はどこに?」
「・・・・・・・・・・・・・お前が選手なのか?」
「さぁね~」
「監督、僕やりたいです」
「僕も」
「お前達は黙れ」
「そうやって有望な選手を潰すんだ・・・可哀相に」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「でも、無駄だよ・・・・俺はお前を許さない」
「・・・・・・・・・・・わかった」
「そうこなくっちゃね!じゃ勝負は来年のインターハイ」
「来年?」
「ハンデをあげるよ」
「それはどうも」
「じゃ、君達・・・・来年までハイジャンを続けていてね」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「楽しみにしているよ・・・・・」
「ああ」
彼はそれだけ言い残し、歩き出した
すごく綺麗な人
そしてすごく綺麗なフォームでバーを飛び越えた
話だけではわからないけど、二人の事はどうでもいい
でも、初めて自分からやりたいと思った
「監督」
「お前達はハイジャンに転向だ」
「はい」
「基礎から教える、今からな」
「わかりました」
そして僕達はその日を境に、ハイジャンに転向した
来年彼と勝負する為だけに
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