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冷たい雨
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次の日、練習の後母親の住んでいる家に連れて行ってもらうことにした
いろいろと買い物をして、翔は母親に服や化粧品まで買ってくれた
「もうすぐですので」
「はい」
新しい家は車で2時間ぐらいの場所
静かな郊外の走り、車を止めた
「ここです」
「すごい・・・・綺麗な家」
「行きましょう」
「はい」
こんなに綺麗な家を用意してくれたんだ
嬉しいな
急いでインターフォンを押して返事を待った
「あれ?」
「おかしいですね、カメラで確認は出来るはずですが」
「出掛けるにしても遅いしね」
「入りますか?」
「燕羽、どうする」
「お願いします」
「では、燕羽に渡そうとした合鍵で」
「はい」
鍵を開けて中に入ると、新築の家の匂いがした
すごく落ち着いた和風の家
壁も廊下も綺麗
でも・・・とても静かだった
「母さん!俺だよー」
「居間は突き当たりみたいだな」
「うん」
急いで居間に向かって母さんを捜した
「母さん!どこー?」
「おかしいな・・・・」
「寝室でしょうか?」
「あっ、そうかも!前に兄貴に蹴られた時頭をぶつけて痛いって言ってたし・・・・今日も頭が痛いのかな?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・燕羽」
「ん?」
「それはいつだ」
「んとね・・・・3日前かな」
「どこにぶつけたんだ?」
「柱だよ、でもすぐ立ち上がって大丈夫だって言ってた」
「昨日病院でそれを話さなかったのか?」
「うん、だって元気そうだったし」
「・・・・・・・・・・・・・・和海」
「はい」
「俺達はここで待とう」
「どうして?」
「いいから」
「わかった」
何だろう
和海さんと翔の顔が怖い
やっぱり頭の事も話すべきだったかな
「翔」
「どうだった?」
何?
どうして首を振ってるの?
「クソッ!」
「えっ?何・・・・どうしたの?」
「燕羽、落ち着いて話を聞け、いいな?」
「うん・・・わかった」
「和海」
「はい、燕羽・・・貴方のお母様は寝室にいました」
「そうなんだ、よかった~」
心配したよ、もう・・・・
「死体の硬直から言って今朝早く息を引き取ったようです」
「えっ?」
何言ってるの?
意味がわからない・・・・・何?
「あの・・・・話がよく理解出来ないんですけど」
「私は専門家ではありませんが、おそらく死因は柱にぶつけた時に脳に受けた衝撃だと」
「待って・・・・だって、昨日はすごく元気で・・・・・美味しいって言ってご飯だって・・・・嘘・・・」
思わず走り、寝室へ向かった
「母さん!」
母親は布団の中にいた
まるで眠っているみたいだ
「母さん、俺だよ!燕羽だよ!!起きて・・・お土産持って来たんだ・・・たくさん・・・だから起きて・・・・お願い・・・・母さんっ!!」
体を揺すろうとして漸く現実を知った
母親の体は冷たくて、硬くなっていたから
「母さん・・・・頭が痛かったの?どうして昨日・・・・ううっ・・・・うわーーーーーっ!!」
悲しい
辛い
痛い
悔しい
そんな感情が一気に涙として流れ落ちた
昨日は一緒に笑っていた母さんがもういない
俺は・・・・・一人
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・兄貴のせいだ・・・・あいつが母さんを殺したんだ!」
「とにかく、ゆっくり眠らせてあげないと」
「ううっ・・・・母さんっ・・・・ああっーーーー!!」
冷たくなった体にしがみつきながら泣いた
冷たい体から微かに母さんの香りが漂っていた
その後の事はよく覚えていない
葬儀はしなかった・・・・来るような親戚もいないから
翔と和海さんは母さんに綺麗な着物を着せてくれて綺麗な棺桶に母親を寝かせてたくさんの花で包んでくれた
俺はずっと泣いたまま過し、今は冷たい雨に打たれながら煙になって空に昇っていく母さんを見つめていた
「大丈夫か?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「体を冷やすな」
そう言って上着を掛けてくれたけど、寒くはないんだ
でも、体が震えて・・・・これは怒り
「兄貴が憎いか?」
「憎いよ・・・・殺してやりたい・・・・あいつは義理の兄貴だから俺の母親とは他人なんだ・・・だからあんな酷い事が・・・・クソッ!」
「わかった、お前の仇は俺が取るから」
「えっ?」
「それと、荷物の中にこれが」
そう言って手作りのお守りを渡してくれた
きっと次の大会にくれるはずだったお守り
いつもこうしてお守りを作ってくれた
「こんな時に言うのは悪いとは思うけど、これからはずっと俺達と生きて行こうよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「一人で生きるなんて言うなよ?悲しいだろ・・・・お前は俺にとって家族なんだから」
「家族・・・・」
「他人でも家族になれるさ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「迷惑とか考えなくてもいいから」
「わかった」
「悲しいとは思う・・・今はすごく辛いのもわかる・・・でも、そのお守りの為にもお前は頑張らなければいけないと思うんだ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・ん」
「今週の練習は休んでもいいけど、来週からは頑張れるか?」
こんな状態で無理だよ・・・・
だって、すごく悲しいもん
無理だよ・・・・何も出来ないよ
(燕羽、ツバメのように跳びなさい)
お守りを握りしめた瞬間、母さんの声が聞こえた
いつも言ってくれた言葉
「母さん?」
その声はとても優しい声だった
きっと天国に行けたんだね
頑張れって言ってくれたんだね
わかった・・・・・頑張るよ
俺、このお守りを持って頑張るから天国で応援していてね
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