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「はぁータイミング悪いな…」
「ルピナス」の中にあるチェーン店のカフェで、抹茶オレだけを頼んで席に着いた。
さっきも飲み物を飲んだけど、時間を潰せる場所がないのだから致し方がない。
買いに来る人は行列を作っているが、店内が小さいため中で飲み食いする人は少ない。
だから、1人で来ている俺は店内の椅子に座ってゆっくりすることが出来るのだ。
はぁー…と何度か溜息を零して椅子の背凭れに体重を預ける。
…何で今会うのかな…。
最低限度の関わりしか持ちたくないのに、運命はイタズラに俺達の仲を深めて行く。
その時、ふと思った。本当に、今更な考え。
…そもそも、何で俺はあの人を避けてるんだろう?
何の前触れもなく思い浮かんだ疑問。
…確か、俺がヤってる汚いことを知られたくなくて…。
誰かを好きになることも、俺が幸せになる資格もないと思って…。
…あぁ、そうだ。薄汚れた花が咲く前に摘み取りたくなったんだ。
そこまで考えた時、いつの日にか気付いてはいけない感情に蓋をした日が蘇る。
…そうだ、気付いてはいけない。彼の優しさに触れる度に、彼のあのキラキラと輝く笑顔を見る度に、自分の中で膨らんでいった感情。
全てに気付いてしまったら、後戻りが出来なくなってしまう…だから、その薄汚れた花が咲く前に摘み取ろうと思った。
思ったのに…。
「…ねぇねぇ、君1人?」
どんどん深みにハマっていると、突然知らない男に声を掛けられて我に返った。
バッと勢いよく斜め上を向けば、見た目は好青年の男がいた。
ドキッ、今度は嫌な意味で胸が高鳴る。
「…何ですか?」
「あ、そんなに警戒しないで。ただ、1人だったから一緒にお茶でもどう?って思って」
爽やかな笑みを浮かべるが、下心が丸見えの笑みだと直ぐに分かった。
生憎、それに気付かないほど純粋な心など持ってない。それに…あの人はそんな風には笑ったりなんかしない。
「お断りします。ナンパなら他でどうぞ」
こんな家族連れがたくさんいる所でナンパをする人の気が知れない。
それを一言だけ伝えて抹茶オレを一口飲む。胸の中で燻っていた何かが少し晴れた気がする。
ホッと一つ息を吐いていたんだけど…。
「いいじゃん、君もつまらなさそうにしてるんだしさ」
「…俺、男ですから」
「分かるよそのぐらい。でもさ、君みたいに綺麗な子なら、男でもイケるってこと」
早速下心を表に出した男にハァ、と今日何度目かの溜息が溢れた。
バカみたい…何しにここに来てるんだか…。
これ以上ここにいても絡まれるだけだ…そう思い、まだ残ってる抹茶オレを持って席を立とうとした。
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